23 完成
ルールは完成した、と思う。だから俺はボドゲをボドゲとして完成させることにした。
まずは果物トークン。通販で手軽に木駒が買えることを知った。
ボードゲーマーにしか需要はなさそうなその通販サイトで、俺は木駒を選ぶ。一個二十円しないくらい。果物の木駒を四種類、林檎とぶどうとバナナと桃。数は二十個ずつもあれば足りそうだ。
今はたくさん作って売るつもりはないから、とりあえずそれだけで良い。数日で届く。可愛い木駒は瑠々ちゃんも好きだから、きっと気に入ってくれる。
木駒の種類に合わせてケーキ台カードと注文カードを調整する。
そのカードは、ミシン目がついているプリント用紙を買って印刷した。多少裏が透けてしまうけど、いかにも手作りの薄い紙をカードスリーブに入れたものよりは綺麗に見えた。
まとめて印刷したものを綺麗に切り離して、それぞれをモビロンバンドで束にしておく。
ルールブックはいかにもプリンターで印刷しましたという見た目だけど、それは勘弁してほしい。今の俺ではこれが精一杯だったから。
それから、百均だけじゃなくて雑貨屋とかも回って、ちょうど良い箱を探した。
カードと木駒とルールブックをまとめて入れておける箱。見た目も可愛い方が良い。できれば題材のケーキに似合うもの、せめて果物なんかの模様のものだと雰囲気もぴったりなんだけど。
これが意外と難しくて、ちょうど良いものはなかなか見つからない。八十個の木駒が案外かさばるのも理由の一つ。でも、大きすぎると邪魔になるだろうし。
ラッピング用の箱なんかも見たけれど、ラッピング用だと強度が足りなさそうだった。繰り返し使う想定だから、多少はしっかりしたものじゃないと困る。
いっそ自作するか、できるだろうか、と悩み始めた頃。ようやくちょうど良いものを見つけた。
いちごのケーキをデザインした缶の小物入れ。しっかりしていて、大きさもちょうど良いし、何よりケーキのデザインなのが良い。
まあ、木駒にいちごはなかったから、いちごのケーキはゲームに登場しないんだけど。それでも題材にはぴったりだと思った。何より瑠々ちゃんが喜びそうなデザインだ。
それから、缶に直接木駒を入れると音がうるさそうだなと思って、布の巾着袋も買った。
ケーキの缶を開けて、中にカードの束を二つ──ケーキ台カードと注文カードを入れる。それから、巾着袋に詰めた木駒を。そして最後にルールブックを乗せて、蓋を閉める。
持ち歩きのときに蓋が開かないように、百均で買ったゴムバンドで止める。
これで、俺が作った初めてのボドゲが出来上がった。初めての、そしてたったひとつの。瑠々ちゃんのためだけのボドゲだ。
缶の中に詰まった木駒の重み。動かすと中で木駒が動いてがちゃがちゃと音がする。手触りが嬉しくなる。
ついに、俺はボドゲを完成させた。瑠々ちゃんは、笑ってくれるだろうか。
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