22 趣味と仕事
──ボドゲ作り進んでますか?
仕事が忙しいらしいのに、俺のことを気にかけてくれている。嬉しくて、俺は急いで返信する。
──進んでます るるちゃんの体質は相変わらず反応しないんですけど それでも良くなっている手応えはあって
──良くなってる自覚があるなら大丈夫ですよ。体質のことはわからないけど。今度遊ばせてください。
いかさんに遊んでもらうのは、瑠々ちゃんと遊ぶのとは別の緊張感がある。ボドゲ好きでいろんなボドゲをたくさん遊んでいるいかさんにも、ちゃんと楽しんでもらえるだろうか。
それでも、遊びたいと言ってもらえるのは嬉しかった。
──遊んで感想聞かせてください
たとえいかさんが面白くないと思っても、その感想をもとに面白くしていける。そんな自信が自分の中にあることに気づいた。
何より、俺は瑠々ちゃんのためにボドゲを作っているんだ。瑠々ちゃんが楽しいって思ってくれたら、それで瑠々ちゃんと俺の二人で遊べたら、それが一番なんだ。
──責任重大ですね、それは。楽しみにしてます。
いかさんの返事を見て、そこでメッセージのやり取りを切り上げることもできた。でも俺はふと、いかさんにずっと言いたかったことを送ってしまった。
──いかさんはボドゲ関係の仕事をするんだと思ってました
──就職先の話です?
──はい
返事は少し間を置いてから届いた。
──就職のときに考えないでもなかったですよ。でも、ボドゲを仕事にするのは大変だろうし、だったら俺は趣味のままにしたいなって思ったんです。
いかさんの言ってることがうまく飲み込めなくて、なんて返事をしようか、俺の指先が画面の上をさまよう。そうしている間に、いかさんのメッセージはまた届いた。
──俺はボドゲが好きです。最近はちょっと仕事に押されてるけど、それでもボドゲを諦めるつもりはないし、ずっと楽しんでいきたい。本気の趣味として、長く続けていきたいんですよ。今のところは、ですけど。
ようやく、俺はいかさんに返信する。
──俺はボドゲを作りたいです ボドゲを作ったり遊んだりそれに関係した仕事をしたいって 思ってます
──それはカドさんらしいなって思いますよ。ボドゲへの向き合い方が、ちょっと違うだけのことでしょう。
向き合い方が違う。そうか、違うのか、と腑に落ちた。
なんとなく、いかさんとは趣味が似ているものだから、同じように考えてるんじゃないかって勝手に思い込んでいた。
だけど、いかさんにはいかさんの考えがあるんだ。当たり前だけど。
それでいかさんは、ボドゲを仕事には選ばなかった。俺は、選びたいと思っている。向いている方向はちょっと違っても、それでもこうしてメッセージを送り合える。
──ボドゲを仕事にするの やっぱり難しいですよね
──それはまあ、難しいかもしれないけど。でも、カドさんはそうしたいんだから仕方ないですよね。俺でできることがあれば応援しますよ。
──ありがとうございます
難しくても、大変でも、先に進める気がした。
だって仕方ないんだ。俺はボドゲを作りたいし、そっちに向かって進みたいんだから。
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