20 ふたりの試行錯誤(中)
新しいルールを組み入れてもう一回プレイする。
次の注文カードの内容が見えていることで、ケーキ台カードを無駄に感じる局面は少なくなった気がする。それに、いざとなれば入れ替えてしまえる。
ケーキ台カードの入れ替えは、ちょっとした相手へのインタラクション──つまり邪魔要素としても機能した。相手が欲しそうなカードがあるから入れ替えてしまえ、ができるようになった。自分はそれで一回の手番を無駄にするからそればっかりやるわけにもいかないし、バランスは取れてると思う。
終了条件は注文カード五枚。五枚手に入れたプレイヤーがいたら、相手プレイヤーがもう一手番やって終了。ここは、スタートプレイヤーじゃない人までにして、手番の回数を公平にする方が良いかもしれない。
勝利点の少ない小さな注文だけだと、相手が勝利点の大きい注文をこなしていたら負けるかもしれない。かといって、勝利点の大きい注文ばかり狙うと数がこなせない。
注文に対して手に入る果物の数のバランスはちょっと気になる。その辺りは細かく調整が必要って気がする。
それでもなんとなく、自分のゲームが形になってきたような、そんな手応えを感じていた。
「瑠々ちゃんは楽しめてる?」
「うん、楽しいよ。なんだかケーキ屋さんごっこしてるみたい」
「それは……良かった」
瑠々ちゃんの「楽しい」も聞けて、満たされた気分になる。うまくいっている実感ににやついてしまう顔を誤魔化して、真面目な顔をしてみせる。そして、瑠々ちゃんに質問する。
「それで、気になるところはなかった? 細かいことでも良いし、何か……ちょっとしたことでも良いから」
「気になることか……」
瑠々ちゃんはテーブルの上を眺めて考え込んだ。しばらくして、口を開く。
「角くんが点数が高い注文カードを手に入れて、その後なんだけど」
「うん」
「注文カードが点数が低い簡単なものしか出てこなかったタイミングがあって、それで負けちゃうかなって思っちゃったんだよね。そのあとで点数が高いのが出てきたからこれなら勝てるかもってなったけど。なんていうか、あのまま点数が高いのが出てこなかったら『勝てないな』って思って、諦め気味になっちゃったかも」
「なるほど」
それは、どちらかが点数の高い注文をこなした後に、逆転できる見込みがないとモチベーションの低下に繋がるってことだと思う。
俺が考え込んだからか、瑠々ちゃんが慌てて顔をあげる。
「あ、でも、ちょっとそう思っただけで、別に……」
「いや、今のは良い意見だと思うよ。逆転できる可能性が見えないと、ゲーム自体のやる気がなくなるのはその通りだから」
「そういうこと、なのかな」
瑠々ちゃんが不安そうに首を傾ける。
俺は、逆転しやすくするためには何が必要だろうか、と考えていた。つまり後半に高得点の注文が見えたら、これなら逆転できるって思えるんじゃないだろうか。そのためにはどうしたら良いだろうか。
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