19 ふたりの試行錯誤(前)
「それで、一緒にボードゲームを作るって、何をしたら良いの?」
真剣な顔で
「とりあえずは、このケーキ屋さんのゲームを一緒に遊んで、感想を言ってほしいかな」
瑠々ちゃんは瞬きをして、首を傾けた。
「それだけで良いの? 今までと変わってないけど」
「瑠々ちゃんの感想が大事なんだ。それに、一回だけじゃなくて何度も遊ぶよ。その場でルールに手を入れながら、何度も」
少しだけ、瑠々ちゃんは何か考えるように黙った。視線が、テーブルの上の手作りのカードやトークンに向かう。そして、次に視線をあげたときにはもう、覚悟した顔になっていた。
「何度もか……わかった。角くんの役に立てるように頑張るね」
「あんまり気負いすぎないで。素直に遊んでくれたら大丈夫だから」
そうして、二人でケーキ屋さんのゲームを遊ぶ。最初にワンプレイやって、ルール自体は瑠々ちゃんはすぐに飲み込んだ。ゲームが終わった後に、納得いかなさそうに唇を尖らせる。
「ゲームが終わるの、早すぎない? もうちょっとケーキ作りたかったな」
「んー、最後がだれるよりはすっぱり終わる方が楽しくはあるんだけど……さすがに注文三つは少なすぎたかもね。次は注文カード五枚を終了条件にしてみようか」
瑠々ちゃんの素直な反応が嬉しくて、俺は身を乗り出した。
「他には? 何か気づいたこととか、感想でも良いけど、何かない?」
俺の言葉に瑠々ちゃんはテーブルの上を見回して、口元に手を当てて考え込む。
「途中で注文と噛み合わないケーキ台を選ばないといけないのがちょっとつまらなかったかも。ゲームってそういうものかもしれないけど。ケーキ台と注文で欲しいものが噛み合わないことが割とあるっていうか」
「両方とも三枚からしか選べないから、かな。でも、二人で遊んでるのに表向きのカードが四枚五枚とかだと逆に多すぎる気もするんだよね。『先を越されるかもしれない』っていうのも、必要だからさ」
言いながら、それでも瑠々ちゃんの感想は引っかかっていた。瑠々ちゃんの言いたいことと、自分の考えが微妙に噛み合っていないような、そんな気分。
ケーキ台、カードごとに手に入る果物が違う。それがやりすぎだったのだろうか。大きさに対応した数だけにして、果物の種類は選べるようにするとか。でも、それじゃ注文の達成があまりにも簡単になりすぎる。
瑠々ちゃんは真剣にテーブルの上を見つめたままだ。
「枚数は三枚でも良いんだと思う。注文に影響のなさそうなカードを選ばなくちゃいけないタイミングが、ちょっとうーんて感じなだけで。それも、後で使える可能性はあるから全く無駄じゃないってのは、わかってはいるんだけど」
瑠々ちゃんの言葉を聞いて、俺も改めて考え直す。注文に使えそうなケーキ台カードがない場合、そうなると確かに「どれでも良いから選ぶか」ってなってしまう。もちろん、先を見越して選ぶことはできるけど、それだって想像でしかないから当てずっぽうになりがちだ。
それを解決するに必要なことは──考えて考えて、ひらめく。
「あ、じゃあ、手番を一つ使ってケーキ台カードを入れ替えできるってのはどうかな。それから、注文カードは次の一枚を表向きにしておいて、確認できるようにしておくんだ」
つまり、いらないカードを選ぶくらいならカードを入れ替えてしまえ、ということだ。注文カードは次の一枚を公開しておくことで、先を見据えた作戦を立てやすくなる。プレイヤーは次の注文を見ながら、選択を考えることができるようになる。
自分のこれが良い思いつきだと感じて、俺は興奮していた。
「このルールで、もう一回やってみよう」
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