15 気分転換
ゲームの終了条件を変えるのはどうだろうか。果物を集め切れるか、というどきどきに繋がらないだろうか。
例えば木カードを三ついっぱいにした人がいたら、とか。それだと小さい数の木カードを選んで速攻でゲームを終わらせるのが強くなりすぎるかもしれない。
じゃあ、先に鳥トークンをいくつ手に入れたら終了、とか。
いや、それよりもタイミングで木カードの価値が変わりすぎる方をなんとかしないといけないか。一手番目か二手番目に5を引けたら強い。でも、四手番目や五手番目の5は価値がない。ただの邪魔なカードでしかない。
木カードに大きさ以外の要素を持たせるとか。瑠々ちゃんもアクションで果物を置くのは楽しいって言っていたし、いっそ全部のカードにアクションをつけるとか。果物をアクションだけで入手できるようにするとか。いやでも。
問題を解決するルールを思いついては、それによって新しく生まれる問題を考える。いろんな案を思いつきはするけど、同時にそれによる問題も浮かんでくる。考えれば考えるほど頭の中はぐちゃぐちゃになっていった。
「あー……気分転換しよう」
キッチンに向かう。粉と卵と牛乳を無心で混ぜるのは、良い気分転換だ。気分転換だから簡単なものしか作らないけど。
それでも、出来上がったお菓子は瑠々ちゃんも喜んでくれるし。
嬉しそうに美味しそうにお菓子を頬張る瑠々ちゃんを思い出して、ひとりでにやにやとする。俺が作るボドゲも、そんな存在になってほしい。
お菓子なら分量通りに混ぜて手順通りに動けば大体はその通りになるのに、ボドゲ作りはままならない。もっとスマートにできると思ってたのにな、なんて弱気にもなる。
クッキーが焼ける甘いにおいが漂う。待ち時間に考えるのはやっぱり瑠々ちゃんのことで、瑠々ちゃんが甘いにおいに囲まれて幸せそうにしてる姿が見たいな、なんて考えていた。
そのときにふと、ケーキも良いな、と思いつく。
ケーキ台は焼くのが大変だから市販のものを使って、クリームを飾って、果物を飾って──そこまで考えて、そうか、果物かと今作っているゲームに結びついた。
小さなケーキ台は、仕入れで果物がたくさん手に入る。逆に大きなケーキ台は焼くのに時間がかかるから、仕入れの時間が減って果物が少ししか手に入らない。それなら、いつだってどのカードだって、選ぶ理由ができる。
ケーキ台と果物を集めて、ケーキを飾って売るんだ。誰に? お客さんに!
そうだ、お客さん。お客さんが注文をしている。注文通りのケーキを作るために、ケーキ台と果物を集める。注文通りに作れたらお金がもらえる。お金が点数!
新しい思いつきに、俺は興奮していた。
ケーキを作るなんて、瑠々ちゃん好みなゲームだと思う。きっとうまくいくって、そう信じられた。
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