14 瑠々ちゃんの感想
「ええっと、わたしの勝ちってこと、だよね?」
「そう。おめでとう、瑠々ちゃん」
それで二人で「ありがとうございました」と頭を下げあったあと、俺はスマホのメモを見返して考え込んでしまった。
気になった箇所はいっぱいある。後半に4とか5とか出てきても、もうそれは埋められないから選ぶ理由がない。つまり木を選択してるようで、実質選択肢になってない。
しかも最後の手番に5を選ぶことになってしまうのは単純な手数の無駄にしかならないから、ゲームへのモチベーション自体が下がってしまう。でも、最後にはそのカードしか残ってないのだ。
「あの、角くん……?」
考え込んでしまった俺を、瑠々ちゃんが上目遣いに見てくる。はっとして、俺は笑顔を作った。
「ありがとう、瑠々ちゃん。遊んでもらったおかげで、問題点がいろいろわかった」
「それなら良かったけど……」
瑠々ちゃんが何か言いたそうに視線をそらす。俺は身を乗り出した。
「そうだ、瑠々ちゃんも何か気づいたことがあったら言って。なんでも良いから。面白くなかったとかでも、俺は聞きたい」
瑠々ちゃんは慌てたように顔をあげた。
「面白くなかったとか、そうは思ってないけど」
「けど?」
ちょっと申し訳なさそうな顔をして、それから瑠々ちゃんは口を開いた。
「なんて言ったら良いかな。あんまりどきどきはしなかったかな……って思った。果物が増えてくのはわかるから、5のカードを選んでも間に合うなってわかっちゃうっていうか」
「どきどきか。5のカードがいっぱいになるのが間に合うかどうかわからない方が良いってこと?」
「そう……なのかな。カードがなくなるまでだと、カードが十枚だから必ず五回ずつ順番がくるよね。だから、あといくつ果物が置けるかってなんとなくわかるなって……見当違いのこと言ってたらごめんね」
俺は首を振って微笑む。
「そんなことない。すごく参考になるよ」
瑠々ちゃんが考えて意見をくれたこと自体がもう嬉しかったし、それだけじゃない。瑠々ちゃんの言うことはその通りだった。木を選ぶとき、それが埋まるかどうか、選んだ時点である程度わかってしまう。
木の大きさの違いも、アクションも、適切な緊張感を生み出してない。
「でもね」
今度は瑠々ちゃんが身を乗り出してくる。真剣な視線が、俺の顔を覗き込んでくる。
「アクションで果物を移動したり増やしたりして、5のカードを埋めるの、楽しかったよ。それに、それだけじゃなくて」
ゲーム中に見るような、覚悟した表情。それが今、俺に向けられていた。
「わたし、自分の手でトークンを動かしたり置いたりってあまりしないから、今日はそれがとっても楽しかった」
ボドゲの中に入り込んでしまう体質の瑠々ちゃん。ボドゲの中に入り込むと、ゲームシステムはいろんなもので表現される。
俺のボドゲならきっと、木に果物が実って、実際に鳥が集まってくるんだろうと想像していた。その体験はとても楽しい。なんならボドゲ好きとしてはとても羨ましい。
それでも、そんな瑠々ちゃんにとっては、自分でカードを持ち上げたりトークンを移動したり、そんなことも楽しさに繋がるのかと、俺は気付かされたのだった。
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