13 テストプレイ

 手番は瑠々るるちゃんからにした。スタートプレイヤーの決め方は何か考えないといけないな、とスマホにメモをとる。

 三枚並んだ木カードの大きさは、1と3と4。瑠々ちゃんは、少し考えるそぶりを見せてから大きさが3の木カードを手にした。それを自分の前に置く。


「それで、果物トークンを選べるんだよね?」

「そう。大きい果物一つか、全部の木に普通の果物一つずつか」

「今は木カードが一枚しかないから、大きい果物を選んだ方が得じゃない?」


 瑠々ちゃんの言葉に、それはそうだと今更に気づいた。どうして今まで気づかなかったのか不思議なくらいだ。

 初手は大きい果物を選ぶデメリットが何もない。ということは、この選択肢は選択肢として機能していない。


「それは……そうだね」

「じゃあ、わたしは大きい果物を置くね」


 俺の内心の動揺なんか気づいてないかのように、瑠々ちゃんは大きい果物トークンを一つ持ち上げて、自分の木カードの上に置いた。

 俺はスマホにメモを取る。大きい果物の選択肢、なんとかしないと。


「はい。次は角くんの番だよ。大丈夫?」


 俺がメモをとっているからか、瑠々ちゃんが首を傾ける。俺は慌てて顔をあげて、大丈夫、と笑ってみせた。


「気づいたこと、メモしてるだけ。ルールの問題とか」

「そっか、作ってるんだもんね。遊ぶの、ゆっくりでも大丈夫だから、頑張って」


 瑠々ちゃんの素直な励ましが嬉しくて、俺はにやける口元を隠すように手で覆った。一呼吸。

 それから自分の手番を考える。木カードを一枚めくって、並んでいるのは1と2と4。今の段階で1や2のアクションカードを取る意味は薄いから、ここは4かな。


「じゃあ、俺は4の木にする。果物は、大きい方」


 俺がわざと有利じゃない行動をするのも違うだろうから、大きい果物トークンを一つとって、自分の木カードに置いた。やっぱり、大きい果物のルールはもうちょっと考えないといけない、と思いながら。

 次にめくれたのは5のカードで、瑠々ちゃんはちょっと迷うようにしてから、5のカードを選んだ。


「5のカード、大丈夫? 果物五つ、埋まらないかもしれないけど」

「でも、1と2のアクションがあるんだよね? それがあればなんとかなるかなって。逆に、次に角くんに5のカード取られたら埋めらるかもしれなくて、それはよくない気がするし」


 瑠々ちゃんはゲーム中、結構思い切りが良い。リスクのある大胆な手を選択できる。そういうところも、好きだな、と思う。

 何より、そうやって決断したときの覚悟した顔がめちゃくちゃかっこよくてめちゃくちゃ可愛いんだ、瑠々ちゃんは。

 その後のゲームで、瑠々ちゃんは言った通りに1の好きな木の果物を一つ増やせるアクションと、2の自分の木の果物を他の木に移動できるアクションで、5の果物の木を埋めていた。

 結果は瑠々ちゃんの勝ち。

 序盤に5の木を取れるかどうかのゲームになってるかもしれない、というのはメモに書いておく。




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