11 手作りのトークン

 ルールを考え直すのも大事だ。でも、瑠々るるちゃんに楽しんでもらうためには、それだけじゃ駄目だと思った。

 印刷所に頼んだり、オリジナルの木駒を作ったりするほどのことはまだできないけど、それでもできる限りのことはやってみたい。

 絵は書けないけど、フリー素材サイトでイメージに合う木のイラストを見つけてきてそれをカードにする。カードには数字をつけて──画像を加工するとか普段やらないパソコンの使い方をして、最初は戸惑ったし時間もかかった。それでもやっているうちに、それらしいものはできた気がする。

 プリンターで印刷して、カードサイズに切り取って、カードスリーブに入れたらオリジナルのカードが出来上がる。

 果物は百均でちょうど良いシールを見つけた。それをやっぱり百均で買った厚紙に貼って、切り抜いて、果物トークンにする。百均が便利すぎる。

 鳥はちょうどいいシールが見つからなかった。だからフリー素材で良さそうな鳥のイラストを探して、それをたくさん印刷する。それもやっぱり厚紙に貼り付けて、切り抜いて、鳥トークンになった。

 見た目を整えるのは、思いがけず俺のモチベーションにも影響があった。手作り感は強くても、見た目がそれらしくなっただけでボドゲの内容物コンポーネントだって気がする。自分がボドゲを作ってるんだって、そう思えてくる。

 そうやって、新しく作ったカードとトークンを使いながら、ルールを考え直す。

 今のルールだと考えることがほとんどない。並んだ木カードの中から一番有利なものを選ぶだけだ。駆け引きも何もない、単純な作業になってしまう。

 どうやったら駆け引きが生まれるだろうか、と目の前に木のカードを置いて考える。果物トークンを一個持ち上げて、木カードの上に置く。

 果物シールはりんごとかいちごとかバナナとか、いくつかの種類があった。カラフルで、ころんとしたデザインが可愛い。きっと瑠々ちゃんも気に入ってくれるはず。

 瑠々ちゃんのことを思い出してにやついた口元を隠すように手を当てる。そのときにふと思いついた。

 果物シールには、サイズの大きなものもあった。サイズを揃えたくて小さいシールしか使わなかったけど、大きい果物シールも使うのはどうだろうか。

 大きな果物トークンを置いた木には、一羽余計に鳥がくる。果物を木に実らせるとき、大きな果物をどれかの木に一つだけ実らせるか、普通の果物を全部の木に一つずつ実らせるか選べるようにするとか。

 大きい果物は強い。でも、木の大きさと同じ数だけ果物が実らなければ点数にならないから、普通の果物を一つずつ実らせる方が効率は良い。どっちを選ぶか悩ましい。ちゃんとそういうバランスになるだろうか。

 早速、大きな果物トークンを作ってみる。それで自分ひとりで試しに遊んでみる。

 最初よりは良くなっている気がする。でも、本当に面白いかはわからない。もっとよくできるような気がしてくる。

 ああ、でも、こうやって考えている今が、瑠々ちゃんのために準備している今が、楽しい。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る