11.
他にも欲しいものがあるのだろうと思っていた時、第三者の声が割って入ってきた。
その声の方へ振り向くと、安野がこちらへやってきた。
その手にはダンボール箱を抱えて。
「え、安野さん、なんですかそれ」
「差出人は分かりかねますが、宛先から察するに、"大河"様。あなたの大切なものが来ましたよ」
一歩身を引いていた"大河"と呼んだ男の子の前にそのダンボールを置いた。
安野を見、それからダンボールをじっと見つめていた。
ダンボールの封が開けられていることから察するに、念の為に中身を見ておいたのだろう。
差出人が分からず、そして急に訪れた男の子のこともまだ分かってない部分もあるから、もしかすると何か手がかりでもないかと思ったのかもしれない。
じっとしたまま開けようとしない大河に対して、安野が「開けてもいいのですよ」と優しい口調で促されたことにより、しかし、それでも用心深そうにダンボールを開いた。
何が入っているのだろうと、好奇心が湧いた小口も一緒になって中身を見ると、おえかき帳数冊にクレヨン、玩具、そして、さっき観ていたアニメのハニワのぬいぐるみが入っていた。
どれもこれも使い込んでいることから、大河がここに来る前、どこかに誰かと一緒に住んでいたということなのか。
その誰なのか見当もつかないが、その誰かに大河は口も利けぬほどの酷いことをされたのだろうか。
けれども、こうしてわざわざ大河の物を送ってくるのだからその誰かではないのかもしれない。
わからない。
どんどん答えがない疑問が次から次へと沸いていき、頭が混乱しそうになった小口は背丈がほぼ変わらないハニワのぬいぐるみを抱え、片手でおえかき帳を捲っている大河の方へ意識を向けた。
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