第1話 ISBNを伝えれば良いでしょ? という話

 人前で言い淀んでしまいそうなタイトルってありますよね。カタカナや漢字のやたら長い羅列とか、方言や外国語の複雑な言い回しとか。

 でも、安心してください。書籍にはISBNという記号番号が振られています。表紙の写真やタイトルを見せたくない場合も、ISBNでデータ検索出来るのです。


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 ISBNは、13桁からなるコード番号によってあらわされ、書籍出版物の書誌を特定することができます。


(「日本図書コード管理センター」https://isbn.jpo.or.jp/より引用)

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 しかし、こんなに事態が単純であるはずがない。それが現実。


 『ガイコツ書店員 本田さん』(KADOKAWA,2016)にはカタコト日本語でBL本を探しにやって来た男性の話が出てきます。本田さんの手腕で、なんとか本の表紙にたどり着けますが、さらにその後が面倒で……。


 ISBNについての引用文の通り、「日本図書コード管理センター」がISBNというコードを管理しています。すなわち、ISBNを付与するのもこちら。よって、付与申請をしていなければISBNが付与されない。

 では、ISBNで本を検索して見つからない時は?

 書店員に聞いても、本田さんのように調査・分析能力に長けた方とはなかなか出会えないのではないでしょうか。


 在庫がない本、絶版になった本、ISBNが付与されていない本などの“入手が難しい書籍”に関して、書店が行えるサービスに限界があります。

 書店に問い合わせた時、『在庫がない。版元からの取り寄せも出来ない』と言われたら、正規ルートは詰んだと思ってください。


 では、この後どうしましょう。


 公正な販売や接客の場合、「商品を求めている人」がゴール地点を決める事になりますよね。(くれぐれも、「店側でなんとかして!」と途中で思考を放棄しないでください。『入手不可』と言われたらその言葉通りなのです)


 購入を諦めたくない場合、次は母体が異なる書店や“別の手段”を当たりましょう。ここで、古書店、フリマ、通販etc.の候補と一緒に挙がって欲しいのが図書館です。むしろ、図書館はこういう時にぜひ使っていただきたい機関です。

 書店と図書館の違いは、ざっくり言うと次の通り。


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書店:「取り扱い店舗・在庫内」でのサービス提供

図書館:「利用者が求める範囲内」でのサービス提供


 (執筆者まとめ)

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 図書館では、「レファレンスサービス」を提供しています。図書館員が探し物のお手伝いをするのです。ここでいう探し物は、本以外のものでも構いません。挿し絵や写真、歴史的記述、論文データ、情報そのもの……とにかくなんでも問題ありません。

 調査以来を受けた図書館員が司書(司書資格を持つ図書館職員)であれば、探している本が存在しない時、『蔵書データにはありません』とか『所蔵はありません』と答えることでしょう。

 これは、『お取り扱いしていません』という意味ではありません。『即時の提供は出来ない』という状況をお知らせしているだけなのです。

 もし、どうしても諦めたくなければ、諦めたくない事を正直に伝えましょう。司書が、探し物の特徴を把握するため、さらに詳しい質問を投げ掛けてくると思います。

 その図書館で手に負えないものであればはっきりと断られるので、遠慮なく伝えましょう。


 レファレンスサービスでは、調査に時間がかかりそうな場合の回答は後日になる場合もあります。司書によっては、手ブラで帰らせてはいけないと、ネット検索のコツを教えてくれたり、類書(似た内容の書籍)の紹介もしてくれたりします。


 図書館では、利用者から「諦めたくない」という意思表示がある限り、調査は続行します。司書にとって、探し物は仕事だから、です。


 少なくとも私は、ISBN未申請で検索できなかったり、絶版で入手困難だったり、そもそも存在する本かすら分からなかったり……という本を探せ、と言われたら「喜んで!」とご依頼を承ります。


 ISBNや書誌情報(本のデータ)でインターネット検索をしても目当てブツが見当たらない時こそ、司書に聞いてみましょう。

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司書に聞けない!! 津麦縞居 @38ruhuru_ka

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