Func5(){ While(1){ Sleep(7200); Sutra_ZunVoise(); } }

ぴ、ぴりり……pi…………p…………………


 しばらくの間は、これで平和な日が訪れていた。あれから一週間。旧スマホへの乗り換えは滞りなく終わり、また同時に霊媒になったスマホは電気代の不要な電源として十分な働きをしていた。オカルトは電気になる。新発見だ。


 散々に調べてみたが旧スマホには物理的・情報的な悪影響は無さそうなので、こちらを使って他の肝試しメンバーにも連絡を取ってみたところ、彼等にも撮った覚えのない写真が出現したらしい……が、とりあえず皆 ひととおりビビって消しただけで事態は終わったようだ。消す前に自分へと「ウィルス感染したかもだーーー!」などと連絡をしたメンバーもいたようだが、丁度その時は電話が繋がらないスマホの初期化中だったようなので諦めたらしい。

 こんな事ならDiscordでも教えておけばよかったな……まあいい。


ぴり……p……


 どうして自分ばかりが執拗に狙われたのかは全く理解わからんが、まあそれは後回しだ。スマホは相変わらず音を鳴らそうと気合を入れているようで、夜になると少し音が鳴り始める……が、これは適宜USB扇風機なりを増設すれば即座に解決した。それでも。たまに鳴るのは御愛嬌……そのうち、電圧増加を検知したら強風にするよう扇風機を改造しようか。それともUSBハブの方を自作するか?どうせ電気の均等な配分にしか使わないのだから、ちょっと頑張って作ればそっちの方が楽かもしれない。


 何にせよ、流石に心霊現象にも限界があるようだ。そもそもが画像を生成する程度の情報改竄システムが、無理にスマホを点けたり動かしてるのだから仕方ないのかもしれない。心霊現象のエネルギー源は不明だが、この分では総エネルギー量は大したものではないのだろう。そして自分のスマホに憑依してると仮定するなら、そこからネット経由で他のメンバーのスマホにも画像を送りつけたのかもしれない。そう考えれば、ネットにアクセスできなくなってから他のメンバーには何も影響がない理由が説明できる。

 どちらにせよ今はUSB電力として活用しているのためか、それ以上の事はできないようだ。


「さて、だからといって放置してても仕方ないんだよなぁ……」


 こう仮にも封印が成功してるとなると、あんまり対処する気は起きない。だが自分にとっては電子工作や回路設計など久しぶりで、それも素人に毛が映えた程度のものだ。もし仮に半田ハンダが取れて作動しなくなった瞬間、また大音量でピーピー言い始めるかもしれない。なのでに余暇を使って予備の改善した回路も作ってあるが、流石に手動で切り替える必要があるため、急に壊れると流石にまずい。なのでスマホを外に持ち運んだりもできないし、だからといって知らん間に復活されても困るので外出も避けたい。

 だからといって、今の無料電源として使えてる状況も手放したくはないが……まあ、自分に都合よく物事が進むとは考えない方が良いだろう。まずこの心霊(霊?)現象とは何なのか?いくつか仮説を立ててみよう。


 オカルトに自信は無いが、数分ほど考えてみた限り仮説は二つ。

①霊が取り憑いていて、その霊が願った現象を発生させるもの

②ルールに基づいて動くもので、その為に物理法則などを歪めるもの

 ……要するに、心霊現象そのものの意思に力があるか、否かだ。そして、どちらにしても物理現象を歪める事に変わりはない。


 前者のように意思あるものであれば、。今は電気でスマホを操る事に固執しているが、固執をやめた瞬間に逃げていく可能性がある。そうなると厄介だ。Euclidだな。

 後者であれば霊が取り憑いてようが意思を持っていようが、あまり関係はない。紫の鏡という言葉を20才まで覚えてたら死ぬとか、4:44に時計を見たら死ぬ……みたいな。つまり封じ込めが可能。Safeか?

 前者であれば霊の心理を読み解いて、いわゆる未練とやらを晴らせば解決するのかもしれない。その方法は分からないが、心理学に興味はないので……そういうのが分かる誰かに任せるべきだろう。

 後者の場合は、霊について考えても意味は薄い。写真を作成して見せる事に固執していることから、写真の何かをハッキリ直視したら死ぬみたいなトラップ呪いがかけられてるかもしれない。だが今のところ仲間が死んだみたいな話は無いので、そのトラップ呪いが遅効性の毒みたいなものでなければ問題はないだろう。削除されたら作り直してくるくらいなので、少なくとも一度見たくらいでは効果がないはずだ。


 どちらにしても、この霊なり呪いなりの効果が絶対的なまで強力な場合、即座に今の無料電源の状態から抜け出してくるはずだ。だが現状そのようなところはない。つまり①であろうと②であろうと、サブのルールとして「心霊現象の起こせる物理的影響力には限界がある」という事がわかる。

 もしかすると、名のある霊であれば空間を歪めたりとか幻覚を見せたり人を呪い殺すといった凄いパワーを持ってるのかもしれないが、そこまでは強くないのだろう……

 とは言ったものの。実のところ、人を感電死させるには50mAもあれば十分だ。つまり、現状の能力でも今この霊媒スマホは……やろうと思えばということだ。この前は光の線をバッテリー端子の部分に通していたが、それを人間に通せばどうなるか?確か、空気よりも人間の肌のほうが電気を通しやすいはず……となると、あんな現象が起きている以上は、大なり小なり危険な代物なのだと考えるべきだろう。やはり対策が必要か……?

 だが対策、対策ねぇ……


 そういえば、最近に見たアニメで「南無阿弥陀仏ナムアミダブツと言えば仏が罪をチャラにしてくれる」という話があったな……真偽は知らんが、恐らく間違ってる知識な気がする。とはいえお経の類が心霊現象に効くとされるのは「耳なし芳一」にも記されている有名な話だ。とりあえずデマでも間違いでも、試してみる価値はあるだろう。しかし、ちゃんとしたお経など知らん……まあ、唱えるだけ唱えてみよう。


「……南無阿弥陀仏ナムアミダブツ


 すると、どうだろう。スマホは数分ほどブルブルと震えたかと思うと、どうも電力の放出が弱まったようで、画面は消灯し、扇風機の風力も弱まってしまった。まあ、だからと言ってモバイルバッテリーは兎も角、扇風機を外すつもりは無いが……

 ひとまず お経が有効だというのなら、今後も定期的に唱えておけば成仏するかもしれない!!そうと分かれば、さっそくノートPCのスピーカーから2時間毎に合成音声ず◯だもんボイスに「ナムアミダブツ、ナムアミダブツ……」と唱えさせるソフトを作ると、そのノートPCを近隣に置いておいた。試しに唱えさせてみた限り、効果は絶大なようで、ナムアミダブツが流れると同時にスマホはブルブルと震えている。

 この音量ならギリギリ普段からしている防音カーテンで問題ない。これでひとまず良いだろう。


 まあYouTubeとかから本職のお経を唱えさせても良いのだが、それだとボリューム最小でも自分の気が散るし、どのお経が効果があるか調べまくる必要があるかもだし、Amaz◯nから荷物が来た時などに流れてるのを聞かれたら"奇妙な家"扱いになってしまうすぎる。流石の自分でも、近隣住民に変な噂を立てられたくはないのだ。

 何にせよ、これでスマホの活性化に自力で扇風機等を増設する等の対処は必要なくなるし、そのまま解決するなら願ったり叶ったりだ。無料電源は惜しいが、安全第一だ。これでなんとか成仏してくれ……




 問題が起きたのは、その夜の事だった。

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