05
◆◆
部屋のドアがノックされ、ゲームを停止させる。
「入っていいよ」と声をかけてから部屋に入ってきた少年、長谷川
時計を確認すればもうすぐ午後3時で、もうそんな時間かと驚く。祐輔とキャッチボールをする約束をしていた。
「ごめん、キリのいいところまでしていい? こいつ倒したら終わるから」
「うん。これ見たことある。シリーズの何番目?」
「7。
「あ、跳ね返された」
「あー。最近ゲームしてなかったから勘が鈍った」
カウンターを食らい、HP0になった。
この数週間は嵐のような忙しさだった。今日は1日オフで、目覚ましをかけなかったら昼まで寝た。父親が1度生存確認に部屋をのぞいたらしいが、全く気付かなかった。このゲームも冬休みから始めたけれど、スイッチを入れたのは4月に入ってから今日が初めて。
教師になって4年目で初めての担任になった。不安は大きい。でも、学校行事になると担任同士でも盛り上っていたのがうらやましかったから、楽しみな部分もある。
(天文部の方は今年はなしと思ってたけど)
職員室の机の引き出しには2枚の入部届が入っている。去年まで部員は男だけで、あれはあれでおもしろかった。今年はまた違った雰囲気になりそうだ。
テレビとゲームの電源を切り、タンスの上に置いてあったグローブを取る。高校で買って3年間めいっぱい使ったからところどころ色がはげている。
「恭くんが小学生のときに使ったグローブって、今も置いてある?」
「多分クローゼットの奥の方にあると思う」
「俺のグローブぼろぼろになってきたから、貸してくれませんか?」
クローゼットを開けると隙間がないほどダンボールが積まれている。大学に通うのに家を出るときに整理したが、社会人になって家に戻ってきてさらに荷物が増えた。グローブは思い入れがあるから捨てずにどこかに仕舞ってあるはずだ。
「また探しておく。見つかったらあげるよ」
「ありがとう」
祐輔の頭をくしゃりとなでる。
祐輔は父親に似て、性格が穏やかで礼儀正しい。俺の両親は祐輔と当時の俺を比べて月とスッポンだと言うから、親の顔が見てみたいと返した。
たしかに昔は勉強嫌いで、一生懸命だったのは野球ぐらいだったけれど……。
いつの間にか、思い出しても笑って懐かしむことができるほどの年月が経っていた。
「お待たせ。行こうか」
ブルゾンを着て、祐輔の後に続いて部屋を出た。
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