14

 部活が終わってみんなが帰った後、放送室に残り、梓に恭くんとデートした話を聞いてもらった。


「恭くんに好きだって伝えた。変えることはできなかったけど」

「そっか」

「でも、ちゃんと自分の気持ちを確認できてよかった。私の初恋は恭くんだよ」


 多分、私は不安だったんだ。

 すぐに優斗君を好きになってしまったら、優斗君に指摘されたように、恭くんへの長い長い片思いは憧れを勘違いしたものだったんじゃないかって。恭くんに好きになってもらいたくて今までしてきたことは何だったんだろうって。


 それが優斗君と付き合うことにブレーキがかかる原因だと、キタ高の文化祭に行ってから薄々気付いていた。由依たちに優斗君のことを話しづらかったのも同じ理由からだった。


「ずーっと片思いしてたから、すぐに違う人を好きになってもいいのかなって抵抗があったんだと思う」

「私は、果乃が恭平さんとつり合うように努力するのを見てきて、人を好きになるっていいなって思った」


 クールで優しくて、そのうえ美人だなんて、梓は私の友だちにもったいない子だ。


「梓に彼氏いないのがほんと不思議。かっこいい弟がいると理想が高くなるんじゃないの」

「ぼんやりしていて見つけられないだけ」

「連絡取ってた人たちとはどうなってる?」

「1人とは1回デートしてみたけど、家でのんびりする方がよかったって思っちゃった。いつも向こうから連絡くれて、私から終わらせてたから、そのうち来なくなった」

「そっか。彼氏が欲しくても、誰でもいいわけじゃないもんね」

「うん。私にとったら、一緒にいて楽しいと思える人自体が貴重だと思う。それに、この前恭平さんを好き『だった』のかって聞いたの、気付いてた?」

「今言われて気付いた」


 遠回りしたけれど、とっくに答えは出ていたみたい。

 誰かを好きになるまでの時間なんて、人それぞれでいいんだ。時間が短くても、その気持ちが軽いわけじゃない。


 恭くんといると行儀いいのに、と家族に何度か言われたことがある。無理はしてなくても、いい子に見られたいという気持ちはたしかにあった。


 だけど、優斗君には最初からめちゃくちゃなところを見せたし、優斗君自身が思っていることを言う人だから、私も優斗君の前では言いたいことを言えるし、そのままの自分でいられる。


 手を繋いだ日から、テスト期間や予定が合わなくて優斗君に会えていない。

 会えない間、優斗君のことばかり考えていた。勉強中でも、気を抜くと思い浮かべてしまうくらい。


 来週は久しぶりに会う約束をしている。

 早く会いたい。聞いてほしいことがあるよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る