第23話 教師の叛乱

 生まれ持った身分がすべての時代――。

 村で起きた殺人の犯人にされた教師の俺は、弁論も許されず、5日後に処刑されることとなった。きっと真犯人は、偉い身分の方なのだろう。俺は冤罪で死ぬ。見殺しにされるのだ。


 雨ざらしの牢に入れられ、村人からは憎悪の対象として、石を投げつけられる。


 俺はもう、きっと助からない。俺のような名無しの権兵衛が、後の時代で冤罪の被害者として扱われることもないだろう。誰も俺の無罪を立証してはくれないのだ。


 なんの希望もない。ならば逆に、憎悪のみを遺そう――。


 俺は牢の外で佇む、教え子の一人を手招きした。


「……――」


 この少年に何を植え付けたか、それは俺が処刑された後の世で分かることだ。


 今はもう、何の恐怖も憎悪もない。ただこの少年の最期を見届けられないことだけが、俺の唯一の心残りである。


 



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る