第24話 だから騙したのに

 うしとらたつうまひつじさるとりいぬ――。これを十二支と呼びます。


 ここにねこはおりません。猫はねずみに騙され、みなより一日遅く神様の下に到着したのです。


 とあるいのしし年の十二月三十一日、猫が十二支を招集しました。


「――干支の十二番目、猪の年が今日で終わる。ここで提案なのだが、来年は猫年にしないか?」


 猫の唐突な提案に、十二支――その中でも鼠は特別大きな抵抗をみせました。


「何を言う! 来年は記念すべき干支始め、鼠の年だ! 神様の許可もなく、勝手なことはできんぞ! ねえ、神様?」


 鼠が上座でウトウトしていた神様に同意を求めました。


「……んー、まあ、別に一年くらい良いんじゃないか? 猫年があっても。そもそもワシ、猫派だし。うん、来年は猫年にしよう」


 神様の許可も下り、翌日から猫年が始まりました。すると、どういうことでしょう。世界中から猫が消えたのです。


 猫は知りませんでした。十二支は、クソ重たいヤンデレ神様の遊び相手をすることが始まりであることを。これから一年間、猫はヤンデレ神様の遊び相手として独占されるのです。


「――まったく。だから私はお前を十二支に入れるのは反対だったのだ。おまえがいない一年を、人間が耐えられるはずもないだろうに……」




 

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