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第25話
お腹の大きな彼女の代わりに、葛西は後片付けをしている。ハルはしぶしぶ手伝わされている。
「”エアエデ”だよ。ちょっと言いづらいかなとも思ったんだけど……英語の発音なら”イェーエダ”的な感じになるけど」
「何語ですか?」
リョウが首をかしげると、くるみは柔らかく笑んだ。
「略語なんだ。もともとはハワイ語でね」
「へぇ。どんな言葉でどんな意味?」
「”
「あ、新婚旅行はハワイでしたっけ? 動画見ました」
「正解~。それは
くるみは左の薬指の銀のハワイアンジュエリーのリングを指さした。
「わぁ~。それいいかも。トップページに宿の名前の由来として載せれば、カップル受けするでしょ!」
「いいねいいね! ターゲットはカップル、家族連れあたりね。カップルなら若者世代からシルバー世代まで幅広く!」
リョウとくるみはぱちんとハイファイブして盛り上がる。
「あんまり興奮すると、赤ん坊が飛び出てくるぞ」
ハルが戻ってきて一人掛けソファにだるそうに座る。
くるみはフンと鼻で笑う。
「鴻上君も変わらないよね。相変わらずAIみたいでさ。あんたほんとに生身の人間?」
リョウはぷはっと吹き出す。
「くるみ先輩も相変わらず言うことが面白いよね。みんな思ってても口にしないことを面と向かって」
「は? なんだよ、誰だみんなって。誰が俺をAIとか言ってるって?」
ハルが目を細める。
「あはははは。学生の時、あんたにフラれた女子がみんな言ってたよ! 冷たすぎてあれは人間じゃないってさ」
くるみはソファをばしばし叩いて笑う。
「シンイチロ。お前のヨメは相変わらず失礼な奴だな」
デザートの洋ナシをカットして持ってきた葛西に、ハルは不機嫌そうに言う。
「悪いな、でも大目に見てやってくれ、妊婦だから」
「そうだよ先輩、それよりもさっきいいアイディアをくるみ先輩と思いついたんだ」
「なんだよ?」
「宿の名前ね、それをね……」
そのまま四人で企画会議になって、気が付くとすでに日が傾きかけていた。
「ホームページに使ってほしい画像はこの前プロに撮ってもらったデータがあるんだ。でも、お前たちもいろいろと撮ってみて。明日からはお前たちのほかに二組、モニター宿泊者がくるよ。この週末は合計三組だな」
「まだオープン前なのに?」
「ま、友達とか取引先関係とかだけど。オープンしたら口コミ書いてもらうってことでな。年末前まで、毎週末、二組くらい格安でモニター宿泊してもらうんだ」
「周辺にもいくつか見どころはあるから、行ってみて。岬とか池とか」
葛西とくるみは顔を見合わせてから、リョウとハルににっこりと笑んだ。
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