Happy ever after、のその後の後
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第120話
破婚が成立してまだ半年も経たないのに、またまた王宮に戻ることになったわね。
シュタインベルクの王都はいつもよりなんだか騒がしい感じがした。一般市民たちにまで、公爵のクーデター失敗が知れわたったから。
幼い第二王子を新王にして政治の実権を握るために違法な商会を作り、そこを通して武器を隣国から大量に密輸した。第一王子を立太子させないように、のちの脅迫の材料としてもと王子妃を誘拐・監禁し、一方では南部の領地にて第一王子を暗殺しようとまでした。
でも公爵の計略はすべて失敗に終わり、アイレンベルク一族と彼らに協力したほかの貴族たちはすべて捕まり、政治犯専用の北の塔に収監されている。
一番の被害者は、幼い第二王子ルキ。わずか七歳にして彼は、東方の大陸の騎馬民族の国に和親のために婿入りすることになったらしい。婿という名の人質ね。あんなかわいい子には何の罪もないのに。彼はもう二度と、こちらの大陸には帰ってこられないらしい。かわいそうなルキ。
王の側妃・リシェル妃は、年中雪と氷に閉ざされた北方の僻地の修道院に幽閉された。公爵は謀反の主犯で斬首刑。公爵令息と協力者の貴族家門は全財産没収の上、全員平民に身分を落とされた。
そしてつい最近、逃亡していた新王子妃トリーシャが小さな村で捕まって王宮まで連行された。王孫を身ごもったと嘘をついて王子妃になったことが重罪だとされて、彼女はリシェル妃とは別の戒律の厳しい修道院に送られた。彼女の恋人だった公爵家の騎士は、どこかの島送りになったらしい。
そんなだから。
王都の庶民の間では、もと王子妃——私、ヴィヴェカの人気が高まっているらしい。彼らは私が廃妃になった後に「マイツェン伯爵」という名誉称号をもらったことを知らないので、「ヴィヴェカ=
幼くして両親を亡くして継母とその連れ子である義姉に虐待され、かまどの灰にまみれていた少女。王子様に舞踏会で見初められて玉の輿に乗ったのに、子供ができないことで身を引いて姿を消した気の毒なもと王子妃。新しい王子妃が王子を騙した悪女として修道院送りになったことで、前王子妃が同情を集めすぎたのね。
たぶん国王夫妻は、その人気の高まりを利用するつもりなんだわ。
「それじゃあ、行ってくる」
シュタインベルクの王宮の外門の前。私はそう言って馬車の座席から立ち上がろうとした。外には、王室の馬車が待っている。
「本当に、ひとりで大丈夫なのか?」
私の手首をつかみ、レンは心配そうに私を見上げた。
「大丈夫。どうせ一緒に行ってもあなただけ入れてもらえないでしょうね」
私はふ、と笑んでレンの頬に触れた。
「大丈夫。悪い人たちじゃないの。話せばわかってくれるはずだから」
レンはそのまま私の手を引っ張って私を抱きしめた。
「今日中に出てこなかったら、明日の朝にはオストホフの大公が迎えに行く」
私ははは、と笑った。
「国際問題に発展しないよう尽力するわ。今日の晩餐までには戻るから」
レンにひとつキスすると、私は馬車の外に出た。
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