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第118話
「それで、腹をくくったのか?」
彼は自分の言葉を持ち出して私の表情を探った。私はレンに腕を回して、ぴったりと抱きついて彼を見上げた。
「私には、自由になったら知りたいことがあったの」
「なに」
「それは内緒なんだけど……あなたに会って、それがかなった。だから、腹をくくってやろうじゃないの。それに……」
廃妃になると決めたときに、ナデァに話したこと。
「誰に何を言われようと、やってみたいことは何でもやってみるし、嫌でもあなたを巻き込むことにするわ」
レンは一笑して、抱え上げた私を見上げた。
「ほんと、あんたといると退屈しなさそうだ」
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大公邸にから戻ってすぐに面倒がるレンを引っ張ってナデァを呼び、私が聞いたことを彼女にも話した。
あまりの衝撃で彼女は三日間も熱を出して寝込んでしまった。かわいそうなナデァ。
大公の妹となれば、取り入ろうと近づいてくる者がいるかもしれない。だから父親のラルドもレンも、彼女には何も知らせなくていいだろうと判断したんですって。今のまま、大公の役割を影武者を立ててやりながら一方では傭兵子爵として商会経営もするなら、それでよかったって。
でもそれがちょっと、あやしくなってきた。
実は私と再会する前から、いくつかの家門との結婚話が出ていたんですって。高位の貴族の令嬢と婚姻して子供を作って、そろそろ王弟として国政を手伝ってほしいという意味があったみたいね。なにせレンは国王のたった一人の血縁であり、唯一信用できる存在だから。今まではなんとかごまかしてきたけれど、かわすのも苦しくなってきた。
だから彼は二重生活もそろそろ潮時かもしれない、とりあえず国内の有力貴族と縁を結んで、兄王の補佐を始めようかと考えていたんですって。
そんな時、私が破婚することになった。
ナデァからは私の力になってほしいと言われ、ラルドからもよろしく頼まれちゃった。
初めは適当にあしらうつもりが私たちの距離はだんだんと縮まって、彼も考えを変えざるを得なくなったの。
レンは兄王に申し出た。大公としての役割を果たす代わりに、結婚相手は自分で決めさせてほしいって。
「それに、今回のシュタインベルクのクーデターの件で小耳に挟んだことがある。側妃の手先だった新しい王子妃が逃亡しただろ。妊娠が偽造だったと発覚して、王と王妃が第一王子とあんたの破婚を無効にする手続きを始めそうだって」
「ええっ?! そんなの、聞いてないけど……」
「あんたも王子に内緒で勝手に破婚を進めただろう? それを逆手にとっての計画らしいな」
「それは……困るわ」
「俺もな、二度も取られるのはごめんだ。だからこの際、すべてカタを付けることにしたんだよ」
—―おそろしい。破婚の無効手続きが進められようとしているなんて。また「一見するとハッピーエンド」ループに戻されるなんて、絶対に避けたい。
ナデァ、寝込んでる場合じゃないわ。
先手を打たないと!
「いや、だから。
レンは一枚の書状を見せてくれた。
そういえば、眠いって文句を言う国王に、何か無理無理に書かせてたわね?
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