ははは。転生ってやつか?
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第2話
***前書き***
ヴィヴェカ=アシェンプテル・フォン・オストホフ・ヴァイスベルクと言えば前オストホフ大公妃のことであると、大公国の民はおろかその周辺国の農民や商人にも知らない者はいない。
彼女は七十六年の生涯のうち、いくつもの尊い身分と称号を得た女性として広く知られている。
かつて女とは父親の所有物でありのちには夫の所有物であると考えられていた時代において、通常であれば認められることのない離婚ののち卑しいとされていた職業に自らの意思で就き、自らの意思で生涯の伴侶となる男性を選んだ。
彼女のその波乱にとんだ生涯の物語は、百年の時を経てもなお、国境を越えて多くの人々に愛され語り継がれている。
しかしなぜ彼女がそのような人生を送ることになったのかは、一般的には知る人はいない。
本書は、前大公妃本人と前大公の回想及び前大公妃の侍女・前リンガー子爵ナデァ・フォルツバルクの日記と彼女の孫娘・現リンガー子爵の手記をもとにして、前大公妃の孫娘である著者が、彼女の知られざる物語をまとめ・加筆したものである。
『ある女の一生』
著者 レニャ・ヴィヴェカ・フォン・オストホフ・ヴァイスベルク
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う――――――ん?
重厚なゴブラン織りのカーテンの隙間から射しこんできた朝の光を瞼の裏に感じて、私は自然に目を覚ました。
なんだろう?
すっごい違和感。
目に映る天井は天井ではなく、艶やかな織物を幾重にも重ねられて優雅なドレープを作り出した……天蓋?
おかしい。
うちの天井は普通の2DKのマンションの白い天井なのに。
なんなの、このゴージャスな天蓋は。
卒業旅行で行ったヴェルサイユ宮殿みたいな感じ。
私、今どこかに旅行中だったっけ?
ベッドの寝心地もまくらの高さや感触も、いつもとは全く違うじゃないの。しかも、天蓋付きって。
旅行に来たとしたら、誰と来たわけ? ニコちゃん? それともタケル?
いやぁ……ニコちゃんは半年前にジャマイカに嫁に行っちゃったし、タケルとはもう一年以上前に別れたよね?
あの二人以外に一緒に旅行する人なんていないし。
「……」
私はため息とともにごそごそと体を起こす。うわぁ! 五人は寝られそうなデカいベッド!
「んん? ん⁈」
なに、このだるさ。これは……アレ、アレじゃないの? 最近はご無沙汰だった、この懐かしい感覚。
めちゃくちゃにシワの依ったシーツに視線を落とす。
これは……
あきらかに、他に誰かがいた!
だって……隣のまくらにくぼみがあるし!
私の腰とお腹が……だるいし!!
物理的な問題を除外しても、ニコちゃんじゃないわ。それじゃあ、タケルなの? いや、あいつとは別れて以来会ってないから違うはず。
でもこれは明らかに、誰か、しかも男が私と一緒にいたのよ。そして私はどうやら昨夜その人と……
「……っ!」
私はひゅっと息をのんだ。
私……一体、昨夜……
誰と寝たの⁈
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