2
第28話
パスタを茹でるためのお湯を沸かす。
玉ねぎ、ピーマン、ベーコンを切る。そして包丁の腹でクラッシュしたにんにくで香り付けしたオリーブオイルでそれらを炒める。
ベーコンの代わりにスライスしたウインナーソーセージ(あらびき)もお好みで。
「にんにくがオリーブオイルの中で香ばしくなったら、私の場合、まずはベーコンを炒めます。ベーコンは3ミリスライスくらいの厚めのものを5~6ミリの細切りにして、切り口にカリっと軽く焦げ目がつくくらい炒めます。そうすると余分な脂が抜けて表面はカリッと、中身はぷりっとした食感が出ます」
お湯が沸騰してきた鍋に塩をひとつまみ、そして人数分のパスタを投入。
「よく、アルデンテとかいいますが、そんなの気にせずに、好みの固さに茹でたらいいと思います。それで、いったんベーコンをうつわにあげておいて、フライパンにそのまま玉ねぎを投入です。ベーコンから出た油も混じっているので、コクが出ます。玉ねぎがしなしなの透明になってきたらピーマンです。ピーマンは炒めすぎると苦みが強く出るので、あとからさっと炒めます。で、ベーコンを戻す」
しょわっ!
フライパンを振ると、宙で野菜とベーコンが美しい曲線を描いて元に戻った。「おおお」という感嘆が沸き起こる。
「それで、ここからはいろいろと作る人の好みが出るところです。ケチャップ、ウスターソースを使ったり、トマトピューレ、トマトソースを使ったり。味に自信がなければ、こっそり顆粒のコンソメなんかを隠し味に使うといいですよ。こんなことを言ったらアレですけど、分量とかこだわらなくてもいいと思います。何度も作って、自分の好みの分量や配分を見つけるんです。料理って、センスや勘が大事なので」
私の場合はトマトピューレ。
「ソースのベースにはケチャップなら水を入れますが、ピューレとかトマトソースならパスタのゆで汁を入れます。炒めた具にピューレを入れて火を弱め、ひと通り混ぜ終わったら鍋から直接、パスタを投入です」
「うわっ、湯切りとかしないんですか?」
橋本さんが恐る恐る発言する。
恐妻家だから彼は私や愛莉ちゃんに質問する時もすごく遠慮がちだ。
私はトングを鍋に突っ込み、パスタをつかみ取ってどばっとフライパンに移す。
「その水気がソースを伸ばす水の代わりになるわけです。ただし、ケチャップを使うときはもともと塩気があるから塩の入ったゆで汁は避けるべきです。ペペロンチーノを作るときも、こんな感じで湯切りしないで移すといいですよ」
へー。
ほー。
こくこく。みんな赤べこ人形のようにうなずく。
なんか、私の生徒たちがかわいく思えてきた。
「はい、ここに隠し味にバターを入れて、味を見て好みになるように塩コショウでアジャスト。よく混ぜてくださいね。火を止めてお皿に盛り、お好みで乾燥パセリをふりかけて、パルメザンチーズを添えて、できあがり~」
先ほどの上山さんの時のように、一口ずつ小皿にとってみんなで私のナポリタンを試食。
愛莉ちゃんと生徒たちは目を見開いた。全員の頭の上に「‼」マークが出現。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます