12
第25話
「愛莉ちゃんは、あっち、年の近い人たちと打ち解けたりしないの?」
私はカズマと財前さんと藤倉副社長のほうをこそっと視線で示した。私たちとは反対側で、上山さんの腹芸を楽しんでいる若者組。
「ああ、別にいいです。年の近い顔のいい男なんて、関心を持てないので。もう少し若かったころはうちのお金目当てに寄って来る男がエンドレスで、嫌気がさして化粧もしなくなったら、ちょっと落ち着いてきた感じです。ぶっちゃけ、男はどうでもいいです」
彼女はクールに「ペットは飼いません」的な口調でそう言うと、赤縁の眼鏡をくいっと引き上げた。
「はぁ、なるほど。財産目当てねぇ」
「私は三女だから、結婚して逆玉とか恒久的な金づるじゃなくて、一時的な遊ぶ金欲しさで寄ってきてたんでしょうね」
「うーん。冷静な分析……」
「これ」
愛莉ちゃんはスマホをちょちょいと操作して、一枚の画像を見せてくれた。
「うぉう~!」
思わず声が出る。
ものすごい美少女が何かのパーティでパステルイエローのチュールのベアトップのイブニングドレスを着て、同じ年頃の白人のタキシード姿のきれいな男の子と腕を組んでいる写真。セレブなオーラがビシバシ出まくっている。なにこれ、アメリカのティーンズ向けのごちゃごちゃ恋愛ドラマのスチール写真? というような。
「昔は私も人並みにこんな感じだったんですけど、あまりにも財産目当てで言い寄られ過ぎて、ウザくて今のスタイルに変えたんです」
「ひゃっ、これ、愛莉ちゃん?!」
「10年くらい前ですかね。留学してた時のプロムの写真です。22歳くらいまではこの路線でしたけど。ひとが金目当てに寄ってくるのも辟易して、外見を地味にしてなるべく人と会わないようにしたんです。おかげで今は快適です」
「はぁ……大変だね」
「お金目当てでなくても、若い人たちより私はむしろ男でも女でも、もっと年上の人たちといたほうが快適です」
そして愛莉ちゃんは私のほうに体を向けて声を潜めて言った。
「あの、こんなこと言ってアレなんですが」
「うん? なに?」
「あの人、吉川さん。紗栄さんのお知り合い。あの人、元カレとかですか?」
私はぷっと吹き出した。
「まさか。小さい頃、ちょっと知ってた程度よ」
「そうですか。あまり気を許さないでください。あの人、お金に汚そうです」
「そうなの? じゃ大丈夫。今の私、お金ないから」
「これから稼ぐでしょう? 彼は金を湯水のごとく使う人相です。気を付けてください」
「はーい。かしこまりました」
冗談とは思うけど、淡々とした口調は妙に説得力がある。
「それと……藤倉さんも、元カレですか?」
「は? 何でそう思うわけ?」
私はぎょっとする。カズマを勘違いされる以上にありえない。
「お互いに目を、合わさないから。おそらく、どちらも高柿先生にハメられて今日、会っちゃったってかんじですね」
私は深いため息をついた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます