第23話

「……腹減った…」



柊先輩が枕に頭を預けている姿も見慣れてきた頃、きゅるるっと鳴ったお腹の音で静かだった空間に柊先輩の声も追加された。


そのお腹の音にも、柊先輩の呟きにも目もくれずに本を読み進めている藤堂先輩はきっと、気付いてないんだろう。


本を読んでいるその横顔を柊先輩が微笑ましそうに見ていたことを。


そりゃ、空を見たり目を瞑ったりももちろんしていたけど、藤堂先輩を見つめている時間は決して短い時間じゃなかったし。



「……ダメ元で購買行ってくるわ」



お腹が減ったと気付くと何か食べたくなるのが人間なわけで。


その空腹を満たそうと柊先輩が起き上がる。


そして、購買に向かおうと立ち上が…



「……なに、寂しいの?」



中腰状態のまま、柊先輩が少し嬉しそうに妖艶な笑みを浮かべる。



「…………」


「…………」



なんで中腰かというと、それは藤堂先輩が柊先輩の制服の裾をきゅっと掴んでいるからで。


本から離された視線は今、柊先輩を捉えている。



「……飴ならありますけど、食べます?」



ちょ、ちょっと俺今見つめ合ってる二人がそのままキスするかと思ってしまった…。


何だ今の妙な空気感…エロい…!!


柊先輩がエロいという噂はなんとなく聞いてたけど、この空気感を醸し出すなんて恐るべし柊先輩…!

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