第24話

「敬語なおしてくれたら食べるしここにいる」


「……分かったよ、ほら飴」



「慣れないんですよ、タメ口って…」という藤堂先輩に「二人の時は敬語やめろっていつも言ってんだろ」という柊先輩。


少しの沈黙の後、折れた藤堂先輩がタメ口で飴玉を差し出した。


うわ、藤堂先輩から敬語以外の会話が飛び出すなんてレアすぎる…!


俺、ここにいてよかった! そして起きててよかった!


二人のやり取りからして、いつもこんな敬語喋ってよって会話の後に藤堂先輩が折れてるんだろうなと思った。


そして購買に行くのを辞めることになった柊先輩は再び枕に頭を預け、そして



「あ」



飴玉に手を伸ばすことなく、口を開いて藤堂先輩を見上げている。



「隼人」



呆れたように柊先輩の名前を呼んで、そのまま動かない藤堂先輩。



「あー」



負けじと動かず、口を開いたまま「はやくここに飴玉を入れろ」と言わんばかりに声を発する柊先輩。



「……はぁ。ほら、あーん」



最終的にはさっき同様藤堂先輩が折れて、柊先輩の口に飴玉が入った。



「ん、さんきゅ」



そういって、藤堂先輩に笑いかける柊先輩。



「その笑顔、反則だから」



はぁっとため息を吐きながら柊先輩から顔を逸らす藤堂先輩。


俺、タオル越しだからそこまではっきりと見えてないと思うんだけど、ため息ついてるけど藤堂先輩ちょっと嬉しそうじゃね…!?


なんか俺、南先輩とマッチョさんのやり取りで好きになるのに性別も何も関係ないんだって再認識しちゃったもんだから、この二人が付き合ってるようにしか見えないんだけど…!?


っていうかこれ、付き合ってない方がおかしい気がするんだけど…!!


いやでも、柊先輩ってチャラくてエロくて有名だから付き合ってるわけはないんだけど…!!


う、うーむ…この美形二人が付き合ってるってなったらさぞかし騒がれそう…。


って、なんか俺新たな扉開きかけちゃってるじゃん!


閉じろ、閉じろ!





ちなみに、昼休みめいっぱいまでそこにいた二人のせいで動けずにいた俺は、見事5限目に遅刻しましたとさ。





柊隼人と藤堂馨とは お互い、とてもとても気心の知れた幼馴染である。ただし、無自覚が織り成す二人の世界に新たな扉を開く人間が多々発生するため要注意。

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