第35話


その瞳に映るのは、一体、なんなのか。




「ふっ、」




零れ落ちる、笑み。




脈なしと分かって立ち去る男にではなくて、あの不思議な女に対して。




沸き上がる興味。




思えば、俺がこうして笑ったのは久し振りの事だったかも知れない。




「…………。」




ふと、女が空を見上げる。




その視線の先にあるのは、煌々と光輝く月だった。



「…………?」




あの女は、何を見ているんだ?

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