第9話



「私は、1度も好きとも愛してるとも頼さんに言わなかったのによ?」




「えっ、1度もですか?」





驚きに目を丸くする莉茉ちゃんに頷く。




「そう、1度も言わなかったわ。好きも、愛してるって言葉もね。」




きっぱりと告げて、コーヒーを飲む。









私なりの意趣返し。








だって、悔しいじゃない?









ーーーー私は、初めから頼さんが好きだったんだもの。




「暁は頼さんに似ているわ。」




「………?」




「ふふっ、誰かを愛したら、一途な所が。」




真っ直ぐに莉茉ちゃんを見つめる。




「だから、大丈夫よ。」




「っ、お母さん……。」




笑みを向ければ、莉茉ちゃんの目尻からぽろりと涙が零れ落ちた。

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