第41話 ボス部屋までは近道したい
外部との不干渉地帯に位置する特別警戒『ダンジョン』の一つ。文字通り天まで届く塔の外観をしたそれを、便宜上『バベルの塔』と呼称する。
現在その『バベルの塔』から現れた推定天使達と、戦闘という名の蹂躙を行っている最中だ。
元々不干渉地帯に放っていた下級から中級の悪魔達で構成された軍勢が、『バベルの塔』内部を侵攻している。
階層で言うと、十階部分まで制圧は完了していた。
ここまでは順調で驚く程に手応えがなく、拍子抜けである。
とはいえ、油断は禁物だ。『バベルの塔』の頂上が一体何階か分からない為、後どの程度の戦闘が続くのかも予想がつかない。
悪魔達の軍勢の後ろで観戦していると、既に私が召喚者であることを確信しているのか、推定天使達から攻撃が度々届く。
もちろん、弾いたそれらが味方に当たらないように配慮している。
『モンスター・ハウス』内では防御面は低くかったが、ステータスはカンストしているだけあって弱点属性の攻撃でも、ダメージは極わずか。
それも下位の回復魔法で全快だ。
その様子を見て、推定天使達に浮かんでいた喜びの表情が一瞬にして、絶望に染まる。
「な!? あいつらは悪魔のはずだろう!? 何故我々の攻撃が効かぬ!」
「確かに直撃したはずだ!」
動揺や困惑が相手側に広がる中、それを無視して悪魔達の軍勢は侵攻の勢いを増す。
それに対して、相手側もすぐに立て直し応戦する。
軍勢同士の力関係は拮抗していた。
当然、
(だけど、何で『悪魔城』の周りに特別警戒『ダンジョン』が固まっているんだろう? あれって、『ギルド』や政府でも対処できていない危険な『ダンジョン』に与えられる名称だよな。
まるで
偶然には出来すぎているし、誰かが仕組んだのか?)
そんな思考に没頭していると、再び神聖属性の槍が二本飛んできた。
「はあ……もう十分に効かないことは分かっているはずなのに、『ギルド』やお前達も無駄な努力が本当に好きだね」
二本の槍を両手掴むと、そのまま相手にお返しする。それと同時に、最大威力の『ヘルフレイム』をぶち込む。
「ぎゃあああ!?」
「ぐおっ!?」
醜い断末魔の合唱が聞こえてくるが、それはここに来てから何度も聞いているせいで飽きてしまった。
このペースでは、『バベルの塔』の攻略には数日かかりそうだ。流石に無意味な単純作業を、ずっとし続ける忍耐力は私にない。
ここは時短をさせてもらうとしよう。
「――『禁忌・邪竜降臨』」
発動するのは、『地獄の門・開門』に続く
私の足元に巨大な魔法陣が出現し、同じタイミングで保有魔力の三分の一が消費されて、軽い目眩が襲ってくる。
(うわ、ちょっとキツイかも……)
この肉体に変化してから、初めての魔力の大量消費。それによる倦怠感は煩わしいが、この魔法にはそれ程の価値がある。
『ダンジョン』内部の頑丈な天井を壊しながら、『ソレ』は現れた。
一つの階層には収まらない程の巨体に、漆黒の体躯。全身を覆う分厚い鱗。
『ソレ』の正体は、七つの頭を有した
『ソレ』の名称は、
その強さは凄まじく、正面からのぶつかり合いでは
もちろん、こんなモンスターを何の代償もなく召喚して使役できる訳がない。
膨大な魔力消費に、顕現可能な時間は僅か三分間だけ。
ゲームの時では、主な用途はボス戦の際にダメ押しであったが、今回は贅沢に使ってやる。
「――
そして、そのままこの塔の頂上を目指せ」
――貴重な魔力を消費した切り札を、ボス部屋に行くまでの足として、今回は使うことにした。
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