第51話 新しい仲間


 僕の視界の先には、『ゴブリンの巣穴』がある。


 恐らくあそこが、このエリアの、ダンジョンの入り口なのだろう。




 ゴブリンの森の道を進むと、その終着点には洞窟の入り口があった。


 大きく平べったい岩が、いくつも積み重なっていて、その中央が空洞になり地下へと続いていた。


 入り口の前には、見張りがいる。

 ────門番のようだ。


 二匹のゴブリンが立っていて、彼らの脇には、篝火が焚かれている。



 僕は森の中から、その様子を確かめている所だ。







 ────これで、今日の目的は達した。

 探索を切り上げて、ドルス村へと帰還しよう。


 僕は見張りのゴブリンに見つからない様に、森の中に身を潜めて後退した。



 欲を言えば、洞窟内部も見ておきたかったが……。


「そこまでは、踏み込み過ぎだよな……」



 今回のダンジョンが、『スライムの森』のように、一度入ると出られない仕様だったら大変だ。



 まずは、情報屋で必要な情報を集めよう。


 洞窟に入るのは、それからだ。








 ドルス村に入った僕は宿屋に帰り、すぐにログアウトすることにした。


 HPの減りは少なくても、近接戦闘の連続で精神的に疲弊している。

 それに、長距離を歩いて、疲れてもいた。


 ドロップアイテムの売却も、明日で良いだろう。


 ベットに入り、眠りに就く────





 翌日、目を覚ました僕は────

 学校に行って、授業を受け、下校する。


 家に帰った僕が、風呂から出て部屋に戻ると、冷泉から連絡があった。



 知り合いのプレイヤーと連絡を取って、ゲーム内の所在地を確認してくれたようだ。


 ────二人とも、『ドルス村』に滞在しているらしい。


 

「そっか、……じゃあ、もう会っているかも、しれないな────」

 

 すれ違っていても、おかしくはない。

 


「それがね、村の広場で『処刑』があったらしくて、その間はログインしてなかったんだって────」



 ……そうなのか。


 じゃあ、僕がその二人と会うのは、初めてになるな。



 僕は情報を聞き終え、冷泉との通話を切る。


 そして、ゲーム世界にログインした。







「まずは、アイテムの販売からだな……」


 僕は村の鍛冶屋に行き、ゴブリンがドロップした装備品を、まとめて引き取って貰った。


 装備品は全部で十五個だったので、金貨15枚の収入になる。


 ────装備のメンテナンスを、ついでに、お願いしておく。



 

 その後で、冒険者ギルドへと移動した。


 冷泉の知り合いとは、ギルド内の食堂スペースで待ち合わせている。



 建物に入り周囲を見渡すと────


「あっ! おーい、こっち、こっち!!」



 大声で僕を呼ぶ、女の人がいた。


 日焼けした肌に、髪を染めている女子高生……。


 うん────

 冷泉から、聞いていた通りの人だ。

 

 待ち合わせの相手は、彼女で間違いないだろう。



 





「あ、あの、初めまして────僕は、その……」


「タナカジロウ君でしょ? レイリちゃんから聞いてるよ。────可愛い見た目の男の子だって、そう聞いてたけど、ホントその通りだね! 抱っこしていい? ウチの膝の上に座りなよ」


 女子高生のお姉さんは、そう言って、自分の太ももをパチパチと叩く。


 僕に座るように、促しているのだろうか────?


 冗談……、なのか……。



「えっと……」


「あはは、冗談だって、照れちゃって、可愛いなぁ~」


 ────ですよね。


 

「レイリちゃんから聞いてるかな? ウチの名前は『温井心愛』(ヌクイ ココア)────ココアって呼んでいいよ」


「わかりました、ココアさん。────では、僕の事もジロウと呼んで下さい」


 相手が名前で呼んで良いと言ってくれたんだから、こちらも名前で良いと言っておこう。


「オッケー! じゃあ、ジローちゃんって呼ぶね。────よろしくね、ジローちゃん」


「こちらこそ、よろしくお願いします。────ココアさん」



 ……なんだか、不思議だ。


 初めて会った人と、スムーズにコミュニケーションが取れている。





「良かったー、仲間になるのが、ジローちゃんみたいな可愛い子で、────おまけに君……すっごく強いんでしょ?」


 ここは、『そんなこと、ないですよ』と言って、謙遜する方が良いのかな?


 でも、これから一緒に、危険な冒険をすることになるのだし、正直に言っておいた方が良いだろう。



「あっ、はい────ダンジョンを二つ、攻略していますので、そこそこ、強いと思います」



 僕がそう自己申告すると、心愛さんは僕の事を引き寄せて抱き付いた。


「頼りにしてるね! ジローちゃん!!」


 抱きしめられたことで、心愛さんの体温が僕に伝わってくる。



 本当に────


 すごく、リアルなゲームだ。






「────んで、そっちに座ってるのが、『寺下』っていう、学校のクラスメイト……」


 僕は心愛さんが紹介してくれた、寺下さんを見る。


 そこに座っていたのは、根暗な感じの男子高校生だった。




「……」


 寺下さんは紹介されても、何も言わなかった。


 ────僕と同じで、コミュ障なのかもしれない。


「このゲームってさ、ほら、現実の自分とそっくりな見た目になるじゃん。だから、クラスメイトとか、知り合いがいたらさ、すぐ分かるんだよね」



 心愛さんと寺下さんは偶然、同じ村に配置されていたのか。


 なるほど────

 そういうラッキーがあれば、チームを組んで、ゲームを有利に進められるだろう。


「それで、お二人は、パーティを組んでいたんですね?」


 僕が尋ねると、心愛さんは意外そうな顔をする。



「えっ? 組んでないよ。────『荷物持ちでもいいから、人手が欲しい』って、レイリちゃんに頼まれて、知り合いだから、声かけてみただけだよ」


 

 どうやら、心愛さんは────

 寝ている間に、お金が貰えるからログインしていただけで、真面目にゲームを攻略する気は無かった様だ。


 僕は心愛さんに抱きしめられながら、チラっと寺下さんを見た。



 寺下さんは僕の事を、暗い目で睨んでいた。


 目が合うと、さらに目を強張らせて来る……。



 なんなんだ、この人────?


 初対面……だよな??




 *************************


 名前    タナカ ジロウ           

 

 職業      冒険者Lv39 魔法使いLv36                       

 戦闘タイプ     特質系 時空間能力者

 魔力属性        闇  

 


 最大HP       140/140

 最大MP       670/670


 膂力         51

 体力        130

 魔力        830

 俊敏         76

 命中         55


 精神力       125

 運          70

 魅力        115       




 装備

 旅人の服 戦士のブーツ 戦士のマント 戦士の鎧 戦士の兜 戦士の盾 魔導士の指輪 勇者のネックレス 戦士の短剣



 スキル

 魔力操作 魔力属性変化 魔力具現化 魔力放出


 魔法

 なし


 特技

 ダークショット スロウ ワープ 回復力上昇 ダークキャノン 渾身の一撃 ブラックアーマー


 所持金

 金貨31枚 


 ボーナスポイント

        2  


 *************************

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