第50話 ゴブリンの森の探索


 宿の部屋で装備を整えた僕は、ドルス村を出て西へと向かう。


 村の西には、広大な森が広がっている。



 その森は『ゴブリンの森』と呼ばれており、ゴブリンというモンスターの生息域になっている。


 村から西へと進み、ゴブリンの森に入り、二時間ほど歩いて進んだ場所に、『ゴブリンの巣穴』と呼ばれるダンジョンがある。


 そのダンジョンをクリアすることが、僕の当面の目標となる。



 

 冷泉からの連絡待ちだが、ずっと一人だった僕にも、プレイヤーの仲間が出来るかもしれない。


 そんな可能性が浮上した。



 それまでに、少しでも準備を進めようと思う。


 仲間が出来た時に、足手まといにならない様に────

 ゴブリンの森で戦闘して、ゴブリンとの戦いに慣れておきたい。





 このエリアに来てから、ゴブリンとは何度か遭遇した。


 ────いずれも、ダークショットで倒した。



 今日は、短剣をメインに戦おうと思う。

 

 短剣は右手に装備して、盾は左腕に付けている。


 





 ドルス村を出て、十分くらい歩くとゴブリンの森に着いた。


 村からここまでの道は、さらに森の中へと、そのまま続いている。

 ────恐らく、ダンジョンまで、この道は続いているのだろう。




 村人が頻繁に、森に入っている設定なのだろうか……?


 森の中には、キノコや草食動物といった食料が豊富にあるだろうから、不自然ではない。だが、道がやや大きくて、しっかりしている印象を受ける。


 冒険者が『ゴブリンの巣穴』を目指すから、自然とけもの道が強化されているのかもしれない。


 ────分りやすくていい。




 

 僕がそんなことを考えながら歩いていると、道の先にゴブリンが出現した。


 ……ええっ!


 ────嘘だろ?



 あまりの事態に、僕は思わず心の中でツッコミを入れる。



 なんと────


 こん棒を構えた一匹のゴブリンが、道の真ん中で待ち構えていた。


 


 ────いや、せめて、もの陰とかに隠れてなよ。


 僕は立ち塞がるゴブリンに対して、反射的に心の中でアドバイスした。


 







 ああ、でも……。


 最初の敵は、こんなものか。




 スライムも、コボルトも────

 村の近くに出現する敵は、難易度が低く設定されていて、戦いやすかった。



 僕はすでに、ダンジョンを二つクリアしている。


 戦い慣れてきたので、敵にアドバイスする余裕が生まれたようだ。



 だが、ゲームを始めたばかりの、初心者から見れば────

 武器を構えたモンスターに出くわせば、それだけで怖いに違いない。




 


 ゴブリンは、こん棒を振り上げて、僕に向かって突っ込んで来る。


 僕も敵に向かって走り、距離を詰める。

 そうすることで、相手の間合いを狂わせた。




 僕の動きが、想定外だったのだろう。 


 ゴブリンは慌てて、こん棒を振り下ろそうとした。

 


 だが、遅い────


 その前に僕は装備した短剣で、ゴブリンの腕を斬りつけていた。


 

 ザシュッ────!!



 ゴブリンの腕ごと、こん棒が宙を舞う。

 

 切断された腕を押さえながら、蹲るゴブリン……。



 僕は続けて────

 そいつの首を短剣で斬りつけ、止めを刺した。




 ゴブリンの身体が、崩れ去る。


 モンスターの身体が消え去った後には、こん棒が残されていた。



 ────ドロップアイテムだ。


 僕はこん棒をアイテムボックスに回収してから、森の奥へと道を進む。






 森を先に進むと、二十分に一度の割合で、ゴブリンが一匹、出現した。


 森に入ってから、合計三匹のゴブリンを倒している。



 現れた敵を難なく倒して、さらに進む────

 進んだ先に、二匹のゴブリンが待ち構えているのが見えた。




 一匹はナイフを装備して、もう一匹は弓を装備している。


 ダンジョンに近づいた為だろう。


 戦闘の難易度が、跳ね上がる。




 

 

 ナイフを持ったゴブリンが、こちらに向かって突進してきた。

 

 その斜め後ろから、弓を装備したゴブリンが、こちらに狙いを付けている。




 僕は少し、横に移動する。


 敵の弓の射線に、ナイフを装備したゴブリンが入るようにしてみた。




 弓を構えたゴブリンは、矢が味方に当たらない様に、山なりに矢を放つ。




 ────ヒュッ!!


 敵の弓が届くのとほぼ同時に、ナイフを持ったゴブリンの攻撃が僕を襲う。



 ────ガッ、キィィイン!!!!


 僕は左手に装備した盾で敵の弓矢を受け、右手に装備した短剣で敵のナイフを弾いた。





 ググッ……。


 僕の方が僅かに、力が強いようだ。


 ────敵の体勢が崩れる。




 僕は装備した盾で、敵のナイフを押さえながら、短剣で敵の心臓を貫いた。



 突くと同時に、素早く短剣を引き抜く────





 ヒュッ!!!


 僕の顔を狙って、飛んできた弓矢を────



 ……ガッ!!


 盾で防ぐ。





 ゴブリンは、弓に矢を番えようとしている。



 今のうちに……。


 僕は走って、ゴブリンとの距離を詰めた。







 敵がこちらに、弓を向ける。



 ────ッ!!


 一歩遅いか────?



 短剣での攻撃は、間に合わない。



 僕は盾を構える。


 そして、そのまま、ゴブリンに向かって体当たりをした。



 ドッ────



「……っ!!」



 敵の攻撃を防ぎつつ、ダメージを与える。 


 僕とゴブリンは、同時に体勢を崩し、つんのめった。




 体当たりを受けたゴブリンは、そのまま後ろに倒れ────

 そこに覆いかぶさるように、僕も倒れる。



 倒れながら僕は、短剣をゴブリンの身体に突き刺した。



 ザシュ────!!


 短剣を引き抜くと、血がほとばしる。


 ゴブリンは死んだ。

 

 



「────ふぅ」


 戦闘が終了し、一息つく。



 ゴブリンが、弓をドロップしていた。




 弓にも性能差があり、粗悪品を装備すると『命中』が下がってしまう。 


 今回ドロップした弓は、どうも出来が悪く見える。



 ────これは、粗悪品だな。


 


 僕はドロップ品を装備せずに、アイテムボックスに収納する。


 そして、森の奥へと進んだ。

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