第24話 ゲッテ村に到着


 昼に帰宅した母親が、冷泉を見て驚いていた。


 僕が友達を家に連れてくることなど、今までなかった。

 初めて息子の友達を見た母は、少し興奮気味だ。


 しかも相手が、美人で人当たりの良い冷泉だったので大喜びだ。


 ────ちょっと、恥ずかしかった。



 母は昼食を冷泉に勧めて、一緒に食べることになった。

 冷泉は昼食の後、自分の家に帰って行った。



「────まさか次郎が、あんな美人なお嫁さんを見つけてくるなんてねぇ」



 ……お嫁さん。


 母は発想が飛躍しすぎている。

 ────勘違いをしているようだ。


 僕は慌てて誤解を解く。


 

「冷泉はただのクラスメイトで、今日は一緒に勉強してただけだから……変な誤解すんなよ」


「あらまあ、そうなの────?」


 母は微笑ましいものを見る目で、僕を見ている。


「────くっ」


 誤解が解けたかどうか怪しいが、これ以上は何を言っても無駄だろう。

 それ以上は何も言わず、僕は自室に引き籠った。



 その日はそれから、読みかけの本を読み、追っているアニメをチェックして過ごした。


 一日が終わり、ゲームを始める時間になる。

 僕は眠りに就き、ラスト・パラダイスの世界に入った。









 僕はテントの中で、目を覚ます。

 

 ステータスを見て、回復具合をチェックする。

 ────よし、全快しているな。



 テントから出て、辺りを見渡す。


 夜は明けているが、森の中なので薄暗い。

 ────霧が僅かに、立ち込めている。


 森のひんやりと冷たい空気が、肌に刺さる。




 装備品をチェックしよう。

 頭にはヘルメット型の兜、動きやすさを重視した鎧に、盾と、腰の後ろにナイフ、厚手のマントに頑丈な靴。


 最後に地図とコンパスをチェックし、進行方向を確かめる。


 僕がキャンプ地から出ると、テントが自動消滅する。



「────さて、行くか」


 僕は森の中を歩き出した。


 





 二時間ほど歩き、森を抜ける。

 それまでに森の中で、スライム三匹に遭遇し、撃退した。


 一度だけダークショットを使わずに、ナイフだけで戦闘してみた。



 スライムの攻撃をギリギリまで引き付けて、直前で躱す────

 相手の体当たりを避けながら、ナイフで敵の身体を斬る。


 二十回ほど攻撃を当てて、やっと倒せた。



「はぁはぁ、はぁはぁ……」


 ダメージは無いのに、やたらと疲れている。



「────精神的な疲労が、半端ないな」


 自分を殺そうと襲ってくる相手と対峙すると、緊張感が増す。


 ステータスの俊敏を上げたおかげで、敵の攻撃を食らうことは無かったが、倒すのに時間がかかり過ぎる。



 ダークショット抜きで、ソロ攻略は無理だと痛感した。






 森を抜けてから、地図とコンパスを確認。

 大まかに現在位置を把握してから、ゲッテ村を目指して出発した。



 歩き出してから、一時間くらいで魔物に出くわす。

 人型の身体に犬の顔が乗った魔物が現れた。


 ────コボルトと呼ばれる魔物だ。



 そいつは僕よりも背が低いが、牙と爪が凶悪で、見る者にプレッシャーを与える見た目をしている。


 全身に緊張感が走る。




 僕は反射的に、ダークショットの準備をした。


 敵に照準を当てて、相手の様子を見る。



 魔物は敵意剥き出しで、僕を睨みつけてきた。

 コボルトがこちらを目指して、まっすぐに駆け寄ってくる。


 ────人型だが武器は持っていない。

 鋭い爪と、大きな牙が武器の様だ。






 ────ドウッ!!!



 僕はダークショットを放ち、コボルトを倒した。


 頭を撃ち抜かれたコボルトは、地面に倒れて動かない。 



 暫くすると────

 スライム同様にその体が塵のように、崩れて消える。


 コボルトが消えた場所が、淡く光り出す。



 そして、毛皮が出現した。






 コボルトのドロップアイテムは、毛皮の様だ。


 アイテムの回収を意識する。

 『コボルトの毛皮』がオートで、アイテムボックスに収納された。



 ゲッテ村周辺の出現モンスターは、コボルトになるようだ。


 僕がゲッテ村に到着するまでに、コボルトは合計五匹現れた。



 すべて一撃で倒したので、スライムとの比較は難しいが、爪や牙で攻撃してくるので、見た目はコボルトの方が怖い。





 

 ゲッテ村に到着したのは、昼過ぎになった。


 ────取り敢えず、宿屋で部屋を取る。

 この村の宿屋もブイロ村同様、三泊で金貨1枚だった。


 

 村にある施設も、ブイロ村と変わりは無かった。

 武器屋に防具屋、道具屋に冒険者ギルド────


 売っている物を見て回ったが、掘り出し物は見つからなかった。



 ここまでの道中で手に入れたスライムの液体と、コボルトの毛皮を道具屋で販売しておく。


 ────全部で、金貨5枚になった。





 鍛冶屋の前を通った時に、ガタイの良いおじさんから声をかけられた。


「おい、坊主────!!」


「は、はいっ……何でしょうか?」



 僕は『ビクッ!』となりながらも、何とか返事を返す。


 以前のブイロ村でのことが、僕のトラウマになっているようだ。

 ────話しかけただけで胸ぐらを掴まれたのが、まだ尾を引いている。

 



「────お前の装備、随分とガタが来てるじゃないか。ここで直していかないか?」


 ……どうやら、親切なNPCのようだ。

 僕の装備を心配して、声をかけてくれたらしい。


 僕は二つ返事で『お願いします』と言おうとして、思いとどまった。


「あの、……お値段は、御幾らになりますか────?」



 ブイロ村の情報屋での失敗は、繰り返さない。


 先にちゃんと、値段を聞いておこう。

 親切に声をかけてくれた人が、詐欺師の可能性だってある。


「値段か────? 装備一式の修繕で、金貨1枚だ。どこの村でも、大体こんなもんだぞ?」


 どうやら、鍛冶屋の利用料金の相場は、決まっているらしい。

 そういえば武器屋や防具屋の商品も、値段は一緒だった。



 僕は装備の修繕を、お願いすることにした。


 装備は定期的に修繕しておかないと、耐久度が下がり、突然、壊れることがあるらしい────



 なにそれ、こわっ!!

 ────僕は戦慄する。


 このゲームは、ちゃんと村人と接触して、情報を集めておかないと、分からないような落とし穴が多い。


 コミュ障には、難易度の高いゲームだ。




 *************************


 名前    タナカ ジロウ           

 

 職業      冒険者Lv20 魔法使いLv17                       

 戦闘タイプ     特質系 時空間能力者

 魔力属性        闇  

 


 最大HP      125/140

 最大MP      480/670


 膂力         28

 体力        130

 魔力        830

 俊敏         62

 命中         55


 精神力       125

 運          70

 魅力        115       



 装備

 旅人の服 旅人の靴 旅人のマント 冒険者の鎧 冒険者の兜 冒険者の盾 魔導士の指輪 勇者のネックレス 冒険者のナイフ


 スキル

 魔力操作 魔力属性変化 魔力具現化 魔力放出


 魔法

 なし


 特技

 ダークショット スロウ ワープ


 所持金

 金貨47枚 


 ボーナスポイント

       1 


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