第25話 現状と、この先


 ゲッテ村の冒険者ギルドに行ってみた。


 建物の構造は、ブイロ村のギルドと変わらない。

 一階は酒場兼食堂で、壁に仲間募集の張り紙や依頼書がある。


 ────二階には、情報屋がいる様だ。

 いずれお世話になるだろうが、今日は用は無い。





 僕は仲間募集の張り紙をチェックする。


 ざっと、見てみる。


 …………。


 この村には、大体十五人くらいのプレイヤーがいるようだ。

 プレイヤー同士で、チームを組んでいるパーティも何組かある。



 ギルドで冒険者を雇うと、お金がかかるからな。


 ────コミュ力があれば、そうするだろう。







 皆、考えることは一緒だ。

 かといって、プレイヤー同士で組んでも、揉め事はあるだろう。


 例えば、このゲームでパーティを組んで戦った場合、経験値は戦闘貢献度によって分配される仕様となっている。



 スズヨウさんとチームを組んでいた時は、僕がほとんど経験値を独占していた。


 ────彼が僕に対して、常にキレていた原因の一つだ。



 NPCに対しても、その辺の配慮は必要だ。

 プレイヤー間では、もっとギスギスしてしまうだろう。


 調整能力の高い人でないと、リーダーは務まらない。


 

 ────僕には無理だ。


 この村での仲間募集は、最初から諦めている。


 募集しても、どうせ誰も応募してこないに決まっている。

 僕は魔法の使えない、魔法使いだからな。




 


 プレイヤーは初級ダンジョンが近くにある村に、ランダム配置される。


 このゲームのテストプレイヤーの中で、初級ダンジョン攻略者は、今のところ僕だけだ。この村でゲームをスタートしたプレイヤーは、今もこの付近のダンジョン攻略を進めていることだろう。


 コミュ力があれば、色々と他のプレイヤーに話を聞きたいところだ。


 けれど、僕には無理だ。




 冷泉が言っていた『攻略サイト』を少し覗いたが、その掲示板に攻略情報は殆ど載っていなかった。


 書き込みは殆ど雑談で、たまに書き込まれている攻略情報は嘘だったりする。

 僕が知っているのは、『スライムの森』の攻略情報が主だが、書き込みの内容は間違いだらけだった。



 ────ネットの匿名情報など、信用できるものではない。


 それは大前提だとしても、それにしても酷かった。




 ゲーム内の情報は、NPCとのコミュニケーションで得たり、情報屋から買ったりして取得する。


 ……ただで教えたくない、という心理が働いているのかもしれない。





 有用そうな情報は仲間の募集くらいだが、求められている人材は、盾使いのタンクと弓装備の遠距離攻撃タイプ。


 『魔法使い』は最高レアの職種らしく、好待遇で迎えるところが多いが、僕は魔法が使えないから……。


 ダークショットを使って見せれば、仲間にして貰えると思うが……。

 チーム内で上手く、立ち回る自信がないので、二の足を踏んでいる。



 ちょっと、シュミレートしてみよう。


 ダークショットは、殆どの魔物を一撃で倒すことが出来る。

 すると、僕の攻撃が強すぎて、経験値の配分が上手く行かなくなる。


 周りに気を使いながら、戦わなければならない。

 けれど僕は、そういう配慮が得意ではない────


 トラブルになることは、目に見えている。



 それでも僕にリーダーシップがあったり、周りを威圧していうことを聞かせられる『強面』タイプだったら問題は無いかもしれない……。


 だが生憎、僕は周囲から『ナメられる』タイプの人間だ。



 絶対、上手く行かないよな。


 スズヨウさんと、最低限の協力関係すら築けなかった。



 ────僕は、ソロでやっていくしかない。

 消極的で、残念な覚悟を決めた。








 この日はまだ、体力も魔力も余裕がある。


 僕は村の外に出た。

 試してみたい事を、やっておこう。



 村から離れ、草原を歩くと魔物が現れる。


 コボルトが一匹────


 僕は腰の後ろに差していた、冒険者のナイフを抜き、構える。

 いつもは右腕に装備している盾は、左腕にある。


 ナイフは右手で構えている。


 ダークショットを封印し、どのくらいできるかの実験だ。

 




 コボルトは、僕に向かって走ってくる。


 ────速い。



 だが、俊敏を強化した僕は、そのスピードに対処できる。


 敵の突進を、ギリギリまで引き付けてから横に躱す。


 躱しながら、構えたナイフを、敵の身体に押し当てる。

 敵の振りかざした右腕を、斬り付けることが出来た。



 ザシュ────



 ナイフで身体を切られても、敵の戦意は衰えない。

 僕の方を振り向きながら、今度は左腕で攻撃してきた。

 

 僕はその腕も、ナイフで斬りつける。


 ザシュ────



 コボルトは大きな口を開けて、僕に噛みつこうと迫る。


 その攻撃を、盾で防ぎ、逆にこちらから、相手の身体を押す様に前進した。



 コボルトはバランスを崩して、後ろに倒れる。

 僕も同時に倒れ、相手にのしかかる。

 


 僕は魔物の上に、馬乗りになった。


 敵の牙を盾で押さえながら、その首をナイフで斬りつけた。



 ザシュ────



 それでも死なない。

 傷が浅い……。



 ────だが、ダメージはある。

 コボルトは弱っている。



 僕はナイフを振りかざし、敵の身体を何度か突き刺す。


 ザシュ──── ザシュ──── ザシュ──── ザシュ────



 ……。


 ……コボルトは死んだ。




 僕は魔物を倒した。


 コボルトを倒すのに、七度攻撃を当てる必要があった。

 

 二十回攻撃しなければ倒せなかったスライムと比べて、コボルトは防御と耐久値が低いようだ。


 その分、攻撃力とスピードがある。




 敵が単体であれば、ダークショット抜きでも倒せた。


 僕はそのまま村の周囲で、コボルトを三匹狩ってから宿屋に戻った。



 ドロップアイテムは無かったが、収穫はあった。



 ダークショット抜きでの、戦闘スタイルの構築────


 その足掛かりを、作ることが出来た。




 *************************


 名前    タナカ ジロウ           

 

 職業      冒険者Lv21 魔法使いLv17                       

 戦闘タイプ     特質系 時空間能力者

 魔力属性        闇  

 


 最大HP      105/140

 最大MP      480/670


 膂力         28

 体力        130

 魔力        830

 俊敏         62

 命中         55


 精神力       125

 運          70

 魅力        115       



 装備

 旅人の服 旅人の靴 旅人のマント 冒険者の鎧 冒険者の兜 冒険者の盾 魔導士の指輪 勇者のネックレス 冒険者のナイフ


 スキル

 魔力操作 魔力属性変化 魔力具現化 魔力放出


 魔法

 なし


 特技

 ダークショット スロウ ワープ


 所持金

 金貨47枚 


 ボーナスポイント

        2 


 *************************

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