第18話 VS スライム・キング


 ────僕は仲間の裏切りにあった。


 そのせいでボス戦の最中、一人で敵に囲まれる事態に陥る。



 まあ、スズヨウさんは最初から仲間という感じではなく、冒険者ギルドで雇っただけの、単なるパーティメンバーでしかなかった。


 当てに出来る戦力でもなかったが、敵の注意を引く囮として、それなりに役に立っていた。



 彼がいなくなったことで、敵の攻撃が最初から僕一人に集中する。


 ────出し惜しみしている場合ではないな。






 僕は左手を銃の形にして、こちらに接近中のスライム・キングに向ける。


 そして、特技『スロウ』を使用した。



 ────世界が停止する。


 ゆっくりと時が進むこの世界で、僕の思考スピードだけが変わらない。





 僕は手の平に、弾丸を三つ創る。


 それを順次、ボススライムに向け射出した。


 弾丸は、時の流れが止まったかのようなこの世界でも進んでいく。

 僕は狙いを少し変えて、次弾を撃ち込む。



 ステータスで俊敏を上昇させた効果か、以前『スロウ』を使った時よりも、この世界での移動速度が上昇している。


 次弾を発射した後、また狙いを少しずらし、三発目を撃つ。


 三発の弾丸はゆっくりとだが、スライム・キングに向かい進む。


 ────よし!!


 このまま進めば、狙い通り敵にヒットするだろう。



 

 僕は『スロウ』を解除────

 それと同時に、今まで感じたことのない衝撃と圧力が左手にかかる。


 三発分のダークショットを一瞬で放ったので、その分の負荷が一気に伝わって来た。



 ────ドウッ!! ドウッ!! ドウッ!!


 ダークショットの轟音が響き、敵の巨体の三か所が爆ぜる。




 

 スライム・キングの身体に、三つの風穴が空いている。

 ちゃんと、ダメージを与えられたようだ。


 ────攻撃は通用する。

 

 これを繰り返せば、勝てる!




 僕はボス戦に、勝ち筋を見出した。

 それと同時に────


 ドッ!  ドゴッ!! 



「うぐっ────!!」


 僕の頭と腕に、打撃が加えられた。


 レッドスライム二匹による、同時攻撃だ。







 振り向くとグリーンスライムも、真後ろに迫って来ている。


 僕は痛みを無視して、『スロウ』を使用する。


 後ろを向いた僕の正面に、グリーンスライムがいた。



 グリーンスライムは地面を蹴って、宙を飛び、僕に向かって迫って来ていた。




 僕は左腕を動かし、狙いを微調整する。


 弾丸を作り、グリーンスライム目がけて射出────



 スロウを解除する。



 ────ドウッ!!


 ぶしゃっ!!!


 ダークショットの直撃で、グリーンスライムが四散した。



 ────ふぅ。


 これで、一匹仕留めた。

 残り三匹……。


 スライム・キングはダークショットの三連撃を受け、動きが止まっている。

 身体をうねらせて、風穴を塞いでいる様だ。





 レッドスライム二匹は、僕の周囲を高速で動き回り、こちらの隙を窺っている。


 左右から同時に、体当たりを仕掛けてきた。



 僕はレッドスライムが跳躍した瞬間に、『スロウ』を使用────


 弾丸を作り、狙いを調節して、ダークショットを放つ。


 ……空中なら、避けれないだろっ!



 スロウを解除し、後ろを振り向く。


 ────ドウッ!!



 動きの速いレッドスライムも、空中では攻撃を躱せなかった。

 


 ────パシャ!!!


 僕の真後ろで、レッドスライムの四散した音が聞こえた。



 僕はスロウを発動し、高速で迫るレッドスライムを確認する。

 レッドスライムと僕との距離は、一メートルあるかないかだ。


 ダークショットを撃ちたいが、左腕の位置が悪い。

 避けるのも無理だ。


 ────仕方ない。


 

 敵の位置を確認してから、スロウを解除する。



 狙いが分かっていれば、僕でも────

 

 右腕に装備した盾で、敵の体当たりを防ぐことに成功した。







 盾で弾かれたレッドスライムは、空中にいる。


 僕はそちらに左手を向けてから、再びスロウを使う。

 狙いを定め、今度こそ、レッドスライムに向けてダークショットを撃った。



 ────ドウッ!!!


 空中で、レッドスライムは弾けて死んだ。






 

 ステータスの俊敏を、上げていなければ……。

 特技のスロウが、無ければ……。


 僕にこんな戦闘は出来なかっただろう。




 だが、とにかく、周囲の敵は掃討できた。


 残るは────







 僕はプレッシャーと恐怖を感じ、背後を見る。


 どっ!! どっ!! どっ!!


 巨体が迫ってくる。

 デカいくせに、スピードも速い。



 あいつの体当たりを食らえば、一撃で死にそうだ。


 攻撃される前から、それが分かった。

 僕は後ろを向いて逃げたくなる気持ちを抑え、スライム・キングに向け左手を向ける。



 ────スロウ。


 そして、時を止めた。

 



 スライム・キングはもう、僕の間近に迫っている。

 スロウを解けば、僕が押し潰されて死ぬまで、あと一秒だろう。



 ダークショットは撃てるが、三連射でも倒しきれないだろう。

 もっと撃ち込むか────?

 

 連続で撃てるだけ……。 


 でも、それで勝てるとは限らない。



 それとも、緊急離脱をここで使う……?

 一度しか使えない切り札を失うが、確実に、逃げることは出来る。 

  


 逃げるか、戦うか…………。


 さて、どうする────?

 







 僕が選択したのは、『戦う』だった。

 

 時間はあるんだ。


 

 僕は一度に弾を三つ創り、撃ち出す。


 少し角度を変えて、それを何度も繰り返した。




 弾は全て敵の巨体に辿り着くだろう。


 スロウを解除する。




 ドォオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!


 轟音が僕の耳に届き────




 ────ズシャァァッァァアアああ!!!!!!!!!!!


 スライム・キングがその体積の半分を失い、四散した。


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