第7話 レッドスライム


 スライムを倒した僕は、さらに先へと進む────


 村の近くで出現したスライムは単独だったが、森に近づくと二匹に増えた。




 スライムの森に近づくにつれ、敵は手ごわくなっていくようだ。



 ……。


 …………。


 ここは慎重に、村の周辺でレベルを上げた方が良いのだろうか……?


 それが正解な気がする。



 僕は一旦、ブイロ村に戻ろうかと考えたが──

 結局はこのまま、前へと進むことにした。




 なるべく早く攻略を進める……。


 冷泉との約束だ。

 僕はその期待に、応えたかった。



 道を前へと進む僕の行く手に、一匹のスライムが現る。






 そいつの身体は赤色だった。


 これまでの三匹とは、色が違う。



 体積は水色のスライムよりも小さい────


 小さいということは、弱い個体なのだろうか……?




 いや、そんなはずはない。

 森に近づいたのだから、強化個体の可能性が高い。


 慎重に戦おう。



 攻撃的な赤色だし、強そうだ。


 レッドスライムは、リズミカルに飛び跳ねながら、こっちに近づいてくる。


 スピードは、ブルースライムと変わらないくらいだ。


 ────捉え切れない程ではない。







 僕は魔法で弾丸を作る。


 魔法で創った弾丸は、一定時間が経過すると消えてなくなってしまう。

 作り置きが出来ないので、敵を見つけてから用意しなければならない。



 僕は銃の形にした左手を、レッドスライムに向ける。


 身体が小さい分、攻撃を外しやすい────



 けれど、ブルースライムと同じスピードなら大丈夫だ。

 的が小さくなっても、当てることは出来る……。

 

 当てることが出来れば、それで倒せる。 



 僕はレッドスライムに、狙いを定めた。





 ────魔物が接近してくると、緊張感が増す。


 僕はパニックを起こしそうな心を落ち着かせ、照準をしっかりと敵の動きに合わせた。


 レッドスライムは、まっすぐに僕を目指して接近してくる。

 

 ────よし、今だ!!



 しかし、僕がダークショットを放つ寸前で、敵の姿が消えた。



「────えっ?」


 

 ヒュッ────



 ドゴッ!!!


「ぐっ!!」




 真横からの攻撃────

 スライムの体当たりを、顔面に喰らった。


 レッドスライムは僕の攻撃意思を察知して、高速で回避行動を取ったのだろう。



 真っすぐ突っ込んで来ると見せかけて、進路とスピードを変化させた。


 どうやらこのモンスターは、フェイントを入れてくるようだ。

 それに、ブルースライムよりも、ずっと速く動ける……。









 僕が敵の姿を見失った次の瞬間に、レッドスライムは顔面に攻撃を加えてきた。


 盾で防ぐ暇もない。


 更に周囲を動き回りながら、僕を攻撃しようと隙を窺っている。


 

 レッドスライムのフェイントに引っかかり、姿を見失う。

 



 ────ヤバい!!


 ズドッ!!


 背中に、体当たり攻撃を受けた。



「……このッ!!」


 ────ドウッ!!



 僕は用意していたダークショットを、レッドスライムに向けて放った。


 だが────


 僕のダークショットは、何もない地面を抉る。




 攻撃はレッドスライムに、躱されてしまった。


 敵のスピードは、弾丸をギリギリで避けるほどの速さだ。






 ……。


 …………。



 ダークショットの、速度が足りない?

 ────もっと射出の魔力を込めるか?


 いや、足りないのは『命中』なんじゃ……?


 ────もっと、ちゃんと狙って……。

 いや、相手の動きが速いッ!


 近付くのを待って……駄目だ。

 相手の動きが速すぎる。


 ────当てずっぽうで、

 ────外した!!


 無駄打ちだ。

 ……緊急離脱を使うか?


 こんな序盤で────?

 でも温存している場合じゃ……。






 僕は戦いながらあれこれと思考を巡らせるが、打開策は思いつかない。

 そうこうしているうちに、さらに攻撃を食らっている。


 ────HPの残りはどのくらいだ?

 確認できないが、このままでは確実にやられる。




 どうする────?


 敵の動きが早いのなら、弾を増やす……。

 避けたところを、連射して────


 いや、それでも当たる気がしない…………。


 どうする、どうする────?




 もっと広範囲に……。


 ……ッ!!


「やって、みるか────」



 僕はこの窮地で、思いついたアイデアを実行する。


 まずは、左手に魔力を集める。

 弾丸はこれまでのように一つの塊では無く、無数の小さい弾を寄り合わせて作った。



 敵に狙いを定める。


 レッドスライムの動きは速いが、その動きにも目が慣れてきた。

 敵の位置を、捉えることは出来る。


「弾が一だと避けられる、なら────」



 僕はダークショットを撃った。



 ────ドウッ!!!!



 ズシャ!!


 無数の小さな石を固めて作った弾は、射出と同時に飛び散って、標的付近を面で蹂躙した。


 散弾による範囲攻撃で、僕は敵を屠ることに成功した。

 

 レッドスライムは即死するダメージを負い、四散し飛び散った。



 後には、瓶に入った、赤色の液体が残されている。




 ────MPはまだ余裕があるが、HPは危ないだろう。


 僕は今度こそ、村に戻ることにした。

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