4集会

「───と、言う訳により、我々[公社]は現在、探索者制度を至急かつ強力に推し進めています」


黒縁に横に長い四角のメガネ、きっちりとわけられ固められた七三の髪型、なるほどファッションはスタイルを表すという、生田目法夫ナマタメノリオと名乗った公社から来たという生真面目を絵に描いたようなものそのものな彼の、印象通りにとても堅苦しくて長い永い話がようやく終わった…


つまるところ電網世界に発生したバグの処理を、エンターテイメント的な興行にするために特定多数に任せ、動画配信コンテンツとして売りだそうという計画のようだ。


これだけの話に原稿用紙30枚分の言葉を用いる事ができるのも、一つの才能なのだろうか…


「一つ聞きたいのですが、その不意に発生する電網世界上のバグというものにはどのくらいの危険性があるのですか?そして我々だけしか処理出来ないのではいずれ仕事が追いつかなくなるのでは…?」


挙手をして、不安気に尋ねたのは壮年の、頭髪がかなり後退気味で頼りなさげな雰囲気を漂わせた男性だった。

この部屋には他にも、年齢性別を問わず様々な人種が無作為に集められている。


「はい、その心配はご尤もですが、問題ありません。当制度の前提条件として、電網世界上のバグの95%は単純な電子的性質の増殖ウィルスのようなものなので攻性AI群により常に処理が為されており、残りの5%は攻性AI群では適正因子の欠如から対処が面倒でコストが見合わない故に、当制度担当者が選択し処理して頂くカタチとなります。その5%を処理する活動内容についてはこれから説明いたしますが、まずもって危険性とはかけ離れた業務であることを御約束いたします。」


つまるところ、この問題は既に片がついており、余裕が計算された部分であぶれ者を救済しようというところだろうか…


「てーことは、あーしらみたいにやることなくてプラプラしてるのに、しかたないからオシゴトくれてやるよ!ってこと?」


金髪に派手なメイク、女子高生そのままな服装をした少女が差し込んだ、それは確かに、その場にいた皆が考えていたことで…


「とんでもございません」

「通知にも記されていた通り、このバグ処理における活動には適正因子と呼ばれる、この通知を受領して頂いた方々に限定されて発見された個人の資質が最重要で必要です、それは大方のバグ処理を行っているAI群にはない要素で、当制度を推進していくには必要不可欠なものです。故に本日の説明会に来訪して頂いた皆様方には、ぜひ当制度への参加をご検討頂きたく存じます。」


機械的処理を担当するAI群では、エンターテイメント的に展開していくという配信コンテンツにも不足があるということもあるのかもしれない。


「たしかに生配信やるなら、AIじゃ不安かもしれないけどさー…バグ処理なんて作業するなら人がやろうがAIがやろうが変わらないんじゃないの?」


机に突っ伏して頭だけを傾けた小生意気そうな少年が突っ込んだ。



…ここに集まった人々に、共通する点なんて見当たらないと、全く違う人種が良くここまで集まったと思っていたが、少し違うかもしれない


「それが旧世界におけるウェブ上ならばたしかにその通りであったのですが、この電網世界では違います。」


ここに集まった人々にはなにか共感するところがある、皆年齢も性別もその性質すら全く異なるけれど


「この電網世界におけるバグは」


ここに集まった人々は、みんな飽き飽きした顔をしている、なにかを欲してここまで来たのだろう


「[ダンジョン]を、造りだすのです。」


きっとここに居る皆は、[目的]を、求めている。



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