第8話 ギルド
早足で歩くシーパに違和感を感じ質問する。
「どうした?シーパ。もしかして押し売りしてくる感じのあやしい店だったのか?」
「多分違う。早くギルドに行かなくちゃ、これを納品しないと…」そう言ってラップで包まれたゴブリンの耳を持ち上げる。
シーパの行動に違和感を感じながらもそのことには聞かず、見慣れない町のことについてシーパに質問を重ねた。
「へーいろんな建物があるんだな。」
「で、ここがギルド。ここでこれを納品をしたらお金が貰えるの。」
「ここが…」
「入るよ。」
「ちょっと待った。俺のことはさっきみたいに誤魔化せよ。俺は黙っとくから。」
「分かった。じゃあ入るね。」
ギルドに入るとイメージとは違って、人がちらほらといるばかりだった。しかし、そのほとんどの人がシーパを訝しんだ目で見ていた。
俺が不思議で見ているのか?しかし、どうもそうではない感じがする。
シーパはそんな周りの様子を気にも止めず、受付の方に向かって行った。
「おねーさん。これ。納品。」そう言ってシーパは、受付の机にラップに包まれたゴブリンの耳5つを置いた。
「えーっとお名前を。」
「この前いっぱい一緒に考えたじゃん。」
「あーそうでしたね。冒険者登録をするときにえーっとなんでしたっけ。アレキサンダーじゃなくてゴットフリートじゃなくてシュピーゲルじゃなくて」
「それはおねーさんに却下されたやつ。」
「あなたが歴代でも偉大な冒険者の名前ばかり言うんですもの。」
「そんな人私、知らないし。強そうな名前考えてたら、たまたま被ってただけ。私の名前はシーパ。」
「そうでした。シーパさん。それでは、冒険者カードを。」
「はい」シーパはカードを手渡す。
「えーっとゴブリン1体の討伐クエストとのことですが、これは?」
「ゴブリン多く倒したから。お金も多く貰えるかなって。」
「そうですね。ゴブリン1体の討伐クエストは、本来ゴブリンの状況確認と初心者の実戦教育のために出しているクエストなので、素材価値のないゴブリンを倒せば倒すほど報酬が出るといったものではないのですが…」
「そうなんだ…」
「ですが、最近ゴブリンの勢力が増しているとの報告もあり、ゴブリンの討伐依頼がちょうど先ほど出ましたので、イレギュラーですがそちらの方から報酬をお渡ししますね。」
「ありがとー。おねーさん。」
「カトラインです。いま、手続きしますから少しお待ちくださいね。」
「ありがとー。カトーちゃん。」
「カトラインです。あと、なんですか?この透明なのは?」
「それは…包帯で…」
「包帯?これがですか?あーあなたも巻いていますね。」そう言ってカトラインさんはラップを勢いよく剥がす。
「キャッ!」ゴブリンの耳から血が飛び、お姉さんの服に飛ぶ。
「なんですか!これ!今さっき、町の近くで取って来たんですか?」
「いや、結構前に。湖の辺りで。」
「この変な包帯のせいですか。素材解体の場所は別にあるので、血が飛ぶようなものは今後そちらに持って行ってください。ギルドを汚さないでください。」
「はい…ごめんなさい…」
「あー最悪…この服結構高いのに…」カトラインさんは小さく愚痴をこぼした。
「ごめんなさい。」
「これは、ただの私の不注意なのでシーパさんはお気になさらず。」
「それでは、ゴブリンを倒した場所と状況。ゴブリンの様子をお聞かせください。」
シーパは丁寧に5体のゴブリンの群れの1匹をこっそり倒したこと。そして、逃げるときに気づかれて3体のゴブリンに追われ、湖の方で3匹を倒し、最後の1匹もそこで倒したと伝えた。俺の存在は伏せられ、カトラインさんも納得してるようだった。
「ゴブリンが2手に分かれて行動をしていたんですね。分かりました。ありがとうございます。」
「それではこれが今回の総計の報酬と…シーパさんのギルドカードですね。今回のクエストでランクがF+となりました。これでFランクの依頼だけですが、依頼を3件までなら同時に受けれるようになります。またクエストを受注する際はクエストボードからお願いします。」そう言ってカトラインさんは硬貨とカードをシーパに渡した。
「ありがとう。カトーちゃん。」シーパは受け取ると、貰った硬貨を二つに分けて
「はい。カトーちゃん。」そう言って分けた硬貨の片方をカトラインさんの方に差し出した。
「えっ?なんですかシーパさん。」
「お洋服が高いって言ってたから。」
「いやいやいや。貰えませんって。シーパさんの方がボロボロじゃないですか!体はさっき言ってた透明な包帯?でぐるぐる巻きだし、服も服じゃなくてもう布を当ててるみたいな感じで…」
「んっ。あげる。名前も一緒に考えてくれたし。決めたのは私だけど…」
「貰えませんって。シーパさん。あなたの報酬なんですから。」
「もういい。」
そう言ってシーパは硬貨を受付に置き、ギルドから出て行った。
「ちょっと待って、シーパさん!」
カトラインさんの声がギルドの中に響いた。
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