第7話 門番
門に近づいたシーパは、門番に挨拶する。
「こんにちはー」
「はい、こんにちは」
「戻ってきたよー。」
「名前は?」
「シーパ。」それを聞いて門番の人はノートにチェックを入れる。
「確認出来ました。通っていいですよ。」
「ありがとー」
「分かってると思うけど、魔物の子供とか卵は持って来てないよね。そう言ったものは町に持ち込めないからね。」
「ラップ君、魔物じゃないよね。」と小声で話してくる。
「違う。違う。持ってきてないって伝えて…」こんなところで持っていかれては何をされるか分からない。できるだけ声を潜めて答える。
「うん?君のその手にあるのはなんだい?」
「こっこれ?これはー」としどろもどろになるシーパを見て、
「うまいことごまかして…」と俺は小声で言う。
「ほっ包帯だよ。工房のおっちゃんに貰ったんだーほら」そう言ってシーパは腕に巻いてるラップを見せる。
「変わった感じの包帯だね。透明だし。」
「試作品って言ってたよ。工房のおっちゃん」
「ブランズさんの試作品か。変わった紙だね。少し見せてもらってもいいかい。」
「いいよ。でも、大事に扱ってね。」そう言ってシーパは俺を手渡す。
「もちろんだよ。えーこれは紙?でつくられた箱なのかな?」門番の人はそう言って、俺を手の上でくるくる回して、観察する。
「その透明の紙はどう出すんだい。」
「そこの口のところからビーって」
「口?ああ少し隙間があるね。ここから。あっ出てきた。」
ばれないように物になりきってゆっくりラップを出す。
「こう引っ張って出すわけだ。へーすごく薄いねこれ。ブランズさんも変わった物をつくるね。何に役立つか分からないけど。」門番は俺を吟味し終えたのか、シーパに手渡した。
「ちゃんと役立つもん!」
「そうだね。少なくとも、従来の包帯と同じようには役立つみたいだね。危険なものもないみたいだし、もう通っていいよ。」
最後にラップとしての誇りを傷つけられた俺は、シーパの手の上で町の門を通り、町の景色を見る。
「すごいな。」
一本道にはにぎやかな屋台や露店がところ狭しと連なって、周りの建物は中世ヨーロッパを思わせる石造りで白い壁とオレンジの屋根の統一感のある街並みが異世界であるという実感を一層強く感じさせる。
「ひどいよ。」
「えっ?」
「ラップ君もっとすごいもん。私の命の恩人だもん。」
「だとしても、あそこでラップです。喋れるし、動けますとか言って、持っていかれたら俺が困る。」
「そうだけど。」
「これからも、できるだけ俺のことは隠してくれ、変な物だと思われて捨てられでもしたら敵わん」
「分かった。ラップ君は変な物だけど。変でも役に立つし…」
「どうしたお嬢ちゃん。」
シーパの体がビクッと震え、声の方から避けるように仰け反る。
「ごめんよ。驚かせるつもりは無かったんだ。お嬢ちゃん怪我してるだろ。このクリームを塗れば切り傷なんてすぐ治るぞ。どうだ。」
「お金持ってないのですいません!」そう言って、シーパは逃げるようにその場を去る。
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