第6話 シーパ

「えっ?知らないの?ギルド。」少女は驚いたように言った。

「分からない。どういうものなんだ?」

「あー所詮、物だもんね。社会のこと分からないんだ。」

「所詮、物とか言うな。」

「しょーがないなー。教えてあげるよ。」


 そう言って少女は立ち上がり歩きながら、ギルドのことを聞いた。俺は、彼女の腕に抱き抱えられながら、その説明を聞いていた。


 ギルドとは、冒険者にクエストを依頼する所のようで、冒険者はクエストを受注し、依頼を達成することによって、ギルドから報酬が貰える組織のようだ。ギルドは15歳から登録出来るらしくて、少女は15歳になったばかりのようだった。


「そうだ、せっかくだからゴブリンの耳も多めに持って行っとこう。」そう言って少女は、先ほど倒したゴブリンの右耳を斬り裂いた。

「これを持っていくのか?」若干ひきながら訊くと

「そうだよ。これをギルドに持って言って倒した証拠になるんだ。」

 そう言って少女は血の滴る耳を持ち上げる。

「そうか、なら俺のラップで巻こうか?」

「俺のラップってww」彼女は突然笑い出す。

「なんだ?」

「下ネタじゃんwww」

「下ネタじゃねーよ!どうなってんだ。お前の価値観。なんで、さっきのラップ君のラップって言ったのと何が違うんだよ。」

「だって俺のラップってwww」

「何が面白いんだよ!」

「いいから、早くその俺のラップで巻いてよwww」そう言って、彼女は先ほど倒した4つのゴブリンの耳とどこからか取り出した1つのゴブリンの耳をこちらに差し出して来た。

「依頼は、ゴブリン1体だけで良かったんだけど、多い分にはいいよね。」

 そう言われて5つのゴブリンの耳をラップで包む。

「ありがとうね。じゃあ、戻ろうか。」

「戻る?」

「あーそっかここにずっといたもんね?私は、町に戻るけどラップ君はどうする?」

「動けなくて困っていたところだ。出来れば、同行したい。」

「じゃあ、一緒に行こ―」ゴーっと少女が手を挙げる。その腕はラップにくるくる巻かれている。


「やっぱシャカシャカするね。ラップ君のラップ」少女は歩きながら体に巻かれているラップに不満をたらす。

「そういうもんだ。怪我してるんだから我慢してろ。」

「お母さんみたいだね。ラップ君。」

「それを言うなら、お父さんだろ。」

「そうだね。ラップ君、男の子だもんね。ちゃんとついてるもん。ラップ君のラップ。」

「やっぱ、そっちも下ネタだよな!そうだよな!『俺のラップ』が下ネタなら、『ラップ君のラップ』もそういう意味だよな!」


「…お前、俺のラップのこと、ち〇こだと思ってんのかい!!!!!」


「うるさい。捨てるよ、ラップ君。なんていうか大人の人がまくしたてるように話すような感じがした。怖かった。あと、お前って言うのやめて。」冷静に注意されてしまった。

「ごめん。悪かった。」こんな年下の少女に声を荒げてしまって少し反省する。

「冗談だよ。ラップ君。下ネタには詳しいみたいだけど、冗談には詳しくないみたいだね。」そう言って少女は意地悪そうに笑う。

「冗談だとしても、半分本音混じってただろ。お前って言うのやめてのところとか」

「それは、お前って言われるより、名前で呼んでくれた方がうれしいけどー。名前もあんまり…」彼女は歯切れの悪い返事をする。

「じゃあ教えてくれよ。名前。そうじゃないとずっとお前って呼ぶぞ。」

「シーパ。最近自分で考えた…」

「えっ?」最近?自分で?


「あっもう町が見えてきたよ!ほら!」シーパは大きな声で指を指す。その先には巨大な人工物の壁がそびえ立っていた。

「あれが町?」不思議に思ってシーパに聞く。

「そうだよ。あそこの門で入るよ。」そう言って開いている門の方に向かう。

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