第5話 ○○さんの○○
見るからに痛そうな傷に葉を張る彼女を見て、何か手助けを出来ないかと思い、ラップを出そうとしたが、さっき限界まで出してしまったことを思い出した。
「えっ?」
チロッと舌を出すようにラップが出た。
「うわっ。可愛いー。犬みたい。」その姿を見て少女が喜ぶ。その年相応のふるまいを見てまた残念な気持ちになる。
「今巻いてやるからな。」とさらにラップを出す。さっき限界まで出してしまったのが嘘みたいにシュルシュルとラップが出てくる。
「ラップ君、さっきもそれ出してたけど何?透明な紙?」
「ラップだ。」
「ラップ君のラップってこと?」
「下ネタみたいに言うな。」
「下ネタ?」
「だから、男性の大事な物を大事なことを強調するために○○さんの○○って言ったり…って言わせんな!」
「分かんない。どゆこと?」
「ラップはこの透明なものの名前で、ラップは俺自体の名前。」
「分かんない。ややこしいね。」
「別にややこしくない。」
「ややこしいよ。ゴブリンから逃げるときも焚火があると思って湖の方に逃げたんだから。あれ、ラップ君のラップでしょ。」
「あーあれはそうだな。」はじめに、誰か気づかないかと思ってラップを空にたなびかせていたのが、焚火の陽炎のように見えていたのか。
「誰かいるのかなと思っちゃたよ。あのせいで死にかけた。」
「すまない。お詫びだ。しっかり巻け。」
「なにするの?」
「このラップを巻くだけだ。その薬草の薬効が浸透するだろう。」
「ふーん」そう言って、彼女は足にラップを巻き始める。
「どうだ。痛くないか?」
「うん。大丈夫。包帯みたいだね。でも、ラップ君足にいたら邪魔だから、ラップ君のラップ斬るね。」そう言って彼女は剣を持つ。
「やめろ。やめろ。自分で切れる。」そう言って自分の刃でラップを切る。
「おー。ラップ君のラップ、自分で噛み切れるんだね。」
「噛んでない。切ってるだけだ。」
「自分の舌を噛み切ってるみたいだね。痛くないの?」
「問題ない。いいから他のところも巻くぞ」
「うん。」
そうして、手足、肩、わき腹の傷ついたところを巻き、原型をとどめていない程ボロボロの麻布の服を心配し、苦労しながらも胸の周りを何周か巻いた。
「きゃーラップ君のエッチー」
「きゃーのび太さんのーみたいに言うな。大体、羞恥心があるならもっとまともな服を着ろ。」
「誰?のび太さんって偉い人?」
「偉くはないよ。その逆。」
「ラップ君って変だね。やってることも言うことも。あと、名前も。」
「名前はラップを出すからで適当にラップって言っただけで」
「もしかして、名前ないの?」
「まぁ、そういうことになるかなー」
「じゃあ、名前つけてあげるよ。あっでも、物に名前つけるのって変だな。」
「物って言うな。物と話してる時点で変なんだからいいだろ。」
「そっかー。私、この前も名前考えたから、得意だよ。名前つけるの。じゃあ、助けてくれたから…くれた…クレラップで!」
「やめろやめろ。クレラップはすでにあるから。」
「あるの?ラップ君の知り合い?」
「知り合いっていうか、先輩?師匠みたいな…」
「へー。じゃあ、逃げてる途中で会ったから…去ってる途中…去らんとしている…サランラップで!」
「それも、先輩!何?知っててやってる?」
「知っててって?」
「だから、俺みたいな物を知ってる?」
「知らない。ラップ君のラップみたいに透明な紙も知らないし、ラップ君みたいな紙?の箱も分からない。やっぱ、ネーミングセンス無いのかなー私。」
「いや、あり過ぎて異次元の領域に入ってるだけだと思うけど」
「いや、だってさーこの前名前考えてたときもギルドの受付の人にとことん却下されたもん。」
「ギルド?」
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