第2話 テーブルの上の餌を待つ犬

 ラップとして生きる?ために何ができるか考えないといけない。手も足もないこの体で…どうするか。

 とりあえず、今のままではラップではなくラップ箱だ。ラップを出そう。道具は人の道具になるために存在するので能動的に動こうとするのは変かもしれないが、そんなことは考えてられない。ラップの口を開いてラップを出す。普通に舌を出すような感じで自然とラップが少し出た。

「うわっ」

 自分がラップであることは分かっていたが、いざラップが出ると驚いてしまう。


 少し出た俺のラップ?を上下に動かしてみる。案外自由に動く。一度限界まで延ばしてみると7〜8メートルくらい延びた。意外と伸びるなと思いながら、シュルシュルとそのラップを戻す。その自然な動きにもう俺の身体はラップになってるんだなと改めて思う。


「で???」

 このラップを動かせたところで、自分のこの身体は動かせないし、ただの箱がびっくり箱になった程度の違いだ。

 何か引っ掛ける枝とかあれば、ターザンみたいにして移動できるのに…周りに見える背の高い草は俺の目線が低いだけでただ生い茂る雑草のようだ。


「どーしよー」

 このままじゃただのラップだ。まあ、意識があり、自由に動かせる時点でただのラップでは無いのだけれど…誰か気づいてくれと思って、ラップを出して頭上?にたなびかせる。

 そうして、夜が来てまた朝になった。寝る必要はないのかなと思っていたが、眠気が来たので寝た。体というか関節の概念がないので、外で寝ても何の問題もなかった。

 朝になっても俺は昨日と何も変わらない姿で周りも何も変わらない光景だ。することがないのでラップを真上にたなびかせる。


 一体なんなのだろう?俺だけではなく多くの人がこのラップの姿になっているのならば、多くのラップたちがその腕をラップを天にたなびかせているのだろう。そして、テーブルの上の餌を待つ犬のように、それとも獲物を待つイソギンチャクのように何かが起こるのを待っているのだろう。そして俺も何かが起こるのを待つだけの生物と化していた。

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