転生?したらラップでした。

患者ンケジャン

第1話 ラップになりました。

 大学生になって1か月。一人暮らしを始め、自炊も少しやり始めた俺は、余った肉じゃがをラップで包み冷蔵庫に入れる。母親から教わった肉じゃがのレシピだが、いつも食べていた母親の味とは少し違った。

 そんな簡単じゃないなと思いながら、使った調理器具の洗い物をしていると部屋の奥からパキッパキッ…と音がする。夜も更け、この部屋には俺一人のはずなのに…洗い物の手を止め、音の鳴る方を探す。ここら辺のはずなんだけどなー。

 そう思って机の下を覗くと細長い箱のような物があった。持ち上げてみるとラップのようだった。見たことないメーカーのラップで買った覚えもない。引っ越しの時以来、誰も部屋に入れてないし、侵入なんてされるはずがない。

「なんだこれ?」

 気になってラップを開き中身を見てみる。

「うわっ!」

 ラップの中からまぶしい光が俺を襲い、反射的に強く目を瞑り、背ける。


 その残像が残っている中、目をかろうじて開く。見える光景に目を2、3回パチパチする。

「はっ?」

 見渡す限りの青空。生い茂る背の高い草。森?そして、目の前には大きな湖があった。

「なんだここは?」

 さっきまで俺の部屋にいたはずで、ただラップを拾っただけで…だいたい、日も暮れていたはずなのにあんなに太陽が照っているではないか。

 記憶喪失か?でも、記憶ははっきりしているし、最後の記憶は一人で部屋に居ただけだ。体のどこも痛くないし…体?

 腕がないっっっ!!!足もっっっ!!!


 えっ?なんだなんだ何が起こっているんだ!手術??怪我をしたのか?なんで??部屋にいたはずだし…何か隕石とか落ちてきたりして…だとしてなんで病院とかじゃなく、こんなところにいる??

 とりあえず、現状を確認しよう。背の高い草に囲まれた森?の中にいる。目をいくら動かしても自分の腕や足、胴体までも見えなく、自分の姿は見えない。手足の感覚がないし、必死で目を凝らしてその場から湖面に見える自分の姿を見る。

「箱?いや違うな、ラップ?」

 そうだ、この姿。このパッケージはさっき見た(時間的にはさっきかどうか分からないが)知らないメーカーのラップだ。

 ラップになってる???

 そのことは分かったが、謎が増えた。どうしよう。何も解決していない。


Q:いまの俺の状態は?

A:ラップ


と言われたところでどうすればいいのだ。俺は死んだのか?死んで前世の行いが悪いからラップにされた?そんなことを考えていても仕方がない。今考えるのは、どうしてこうなったか?ではなく、これからどうするかだ。

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