第5話

「その美しい容姿も、頭の良さも、気の強いところも次期園崎グループ社長に相応しい」




容姿ねぇ。


捨て子の私だから、両親のどちらに似てるかもわからない。




「カフェオレ色のサラサラでストレートな髪も」




園崎の手がこっちに伸びてくるから、届かない位置まで下がる。




「髪と同じ色の切れ長の瞳もそそられる。睨まれるだけでイキそうになるね」




おぇ……。




「いつもピンクの唇はキスしたいくらい魅惑的だ。それにほっそりとした体に身長も俺と並んだら丁度いい」




いや、ピンヒール履いたら越しますよ?




「えー、やだぁ。剛史ぃ、あたしの方が剛史を幸せに出来るよぉー」



「あたしだって、剛史を幸せにしてあげれるもん!!」



「まぁまぁ落ち着け、お前達。お前達も可愛い可愛い」




恐ろしい程気持ちの籠もっていない声。



というか、そういうことは私の居ないところでやってほしい。



サッサと去ってほしい。



掃除が出来ないから。




「今度ご飯でも」



「お断りします」



「君では絶対に行けない、フランス料理だよ?」



「お断りします」




絶対に行けないって決めつけですか……。



嫌味な男。



大嫌いだ。




「ツレないねぇ……。まっ、学費を稼ぐために働いてるのを邪魔したら可哀相だ」



「剛史、優しいーーっ」



「貧乏って可哀相ーーっ」



「……」




ただ黙って三人を見つめる。




「やだーっ。こっちを凄い顔で睨んでるよぉー」



「怖ぁぁいっ。もうこんな奴放っておいて行こうよー」




止めないのでどうぞ行ってくたさい。




「OK。じゃあな、ちまり。また」



「いえ、もう二度と話しかけないで下さい」



「ハハッ!!やっぱり好みだぜ」




勘弁してほしい。



歩き出す園崎と取り巻きの女のコ二人。




「うっ!?」




すれ違いざま、一人の女のコにおもいっきり体当たりされ……




「ぐぅっ!?」




よろけたところでもう一人にも体当たりされ、相手の肩が頬にぶつかる。



結構な衝撃で口の中が切れた。




「やぁだっ」



「ダサッ」




そんな私を見て嘲笑う、女のコ二人。



そして見えてるのに、止めもせずニヤニヤ嗤う園崎。




ベッ!!



血を吐き出す。

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