日曜日 15:00
朝から酷い二日酔いだった。
大して飲んだ訳でもないのにテンションが低かった所為か酷い二日酔いに朝から吐いた。
眠いって思うのに横になると目が回って吐き気がするから、座ったままウトウトしてる時間が続いた。
瀬能先生に連絡したいって思いがなかった訳じゃない。
だけど土日は研修だって言ってたし、連絡したところで何を言っていいのか分かんない。
シミュレーションはしてみたけど、どんな言い方しても内容の酷さは変わらなくて、何をどんな風に言うのが効果的なのか分からなかった。
冷静じゃないのに、冷静になろうとしてる。
こういう時、自分の性格が嫌になる。
くるみみたいに気持ちのまま行動出来ればいいのにと思う。
一葉みたいに平気だって振りを貫き通せればと思う。
だけどあたしはそのどっちも出来ない。
中途半端なままグズグズと考えるだけで行動に移す事が出来ない。
ただギリギリの理性が、冷静になれと言う。
そしてそれに従おうと必死になってる。
無理なくせに大人の振りして爆発寸前の感情を抑え込んでるから、こんな風に体に異変をきたして吐く羽目になる。
いくら珈琲を飲んでも体のダルさが抜けなくて、浴槽にお湯を溜めてゆっくり入ろうかと、夕方近くになってようやく動き出した時にスマホの着信音が鳴った。
一瞬、先生からかと期待した。
先生だったら何を言えばいいのか分かんないくせに、スマホに飛びついた。
けど。
『うまこ! デートか? 今日もデートか!?』
電話の向こうから聞こえてきたのは、騒々しい社長の声。
「デートじゃないです。何ですか?」
二日酔いの頭に響く騒々しさに、答えたあたしの声はちょっと刺々しかった。
『家か!? 出先か!?』
「家です」
『暇か!? 暇だよな!?』
「暇でもないです」
『暇じゃねえって何でだよ!? 何してんだよ!?』
「今からお風呂に入ろうかと」
『つまり暇なんだな!?』
「…………」
『暇で暇で仕方ねえんだな!?』
「何の用ですか?」
『ちょっとおつかい頼まれてくれねえか?』
「おつかい!?」
『買ってきて欲しい資料があるんだよ』
「はあ!?」
『どうせ暇だろ? やる事ねえんだろ? 頼むから買ってきてくれよ』
「自分で行って下さいよ!」
『今、手え離せねえんだ。ノッてきてる』
「…………」
『資料のリストはスマホにメッセージで送るから、風呂入ってから買って持ってきて』
「時間掛かりますよ?」
『いい、いい。とりあえず頼むわ』
「分かりました」
『お前、
「はあ!?」
休日に、人におつかいを頼んだくせに、そんな捨て台詞を吐いて社長は通話を切る。
機嫌が悪いから、煮ても焼いても食えない相手にまんまと使われてる自分にイライラして、ゆっくりお風呂に入ってから行ってやろうと、あたしはその場で服を脱ぎ捨てた。
お風呂場に向かう途中で社長からのメッセージ着信音が鳴ったけど、出てからしか見てならないと決めたあたしは、それを無視してやった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。