第4話 声
◆声
その時だ。
叫び声が聞こえた。女の子の声だ。よく聞いていないと女の子か、それとも小さな男の子の声なのか分からない声だが、俺には女の声だと分かった。
「誰か、たすけて!」と、確かにそう言っている。
夢の中の声なのか?
確かめようにも、心とは裏腹に、体が目覚めようとしなかった。それほど睡眠を欲していたのだろうか?
・・俺は昔からよく幻聴が聞こえる。
一度、親にも不気味がられたことがあった。
「学校の先生の声が聞こえる」
俺は家で両親にそう言った。両親には信用してもらえなかった。
「何をバカなことを言っているの」母にそう戒められた。
俺の言葉が真実味を帯びたのは、翌朝だった。小学校の教師が首を括ったのだ。
自殺だった。
子供だった俺にはその理由はよく知らされていなかったが、後日、聞いたところでは、教師は、生徒の女の子に無理やりに性的暴行をしたらしい。その発覚を恐れ、自らの命を絶ったのだ。
そこまで思い出すと、目が覚めた。
人の気配で目が覚めたのだ。
雑草を踏みしだく音・・こんな所に人が?
そう思ったのは、向こうの方だったようだ。
「おじさん、誰?」
そう言ったのは、12歳前後と思われる、白い少女だった。
白い、と思ったのは、上から下まで白色で覆われていたからだ。白い帽子に白のワンピースに白い靴。
どこかのお嬢さまのような装いだ。だが、若干、古さを感じるのは俺の感覚がずれているからか? 更に少女が白く見えたのは少女の肩に広がる髪の色だ。金色だった。
高く通った鼻筋に、大きく澄んだ瞳。その色は碧い。
「おじさん、こんな所で、何をしているの?」
それはこっちが訊きたい質問だが、
「ここで、昔・・子供の頃、遊んでいたんだ」と答えた。
「おじさんが子供の頃?」
少女は俺に興味を示したのか、特に警戒する様子も見せず、ベンチの近くまで来た。
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