第2話 故郷

◆故郷


 そう思った時、俺の頭に浮かんだのが、故郷の光景だった。

 俺は、地元を離れ、故郷から遠く離れて住んでいる。しかも、そこには生家である実家はない。両親も離れて住んでいる。

 そうなると、年を重ねるにつれ次第に故郷から遠ざかっていく。

 物理的にも離れると、視覚的にも故郷を忘れていく。

 視覚的にも薄れると、心も離れていく。心も離れると言葉がなくなる。


 たまに何かの機会で訪れる故郷の地はどんどん変わり果てていく。知っている人も次第にいなくなったり、取り壊されてしまって更地になっている箇所がいくつもあったり、どこにこんな広い土地があったのだろう、と思わせるような大きなマンションが建っていたりする。また少子化のせいか、学校が廃校になって病院に変わっていたりする。

 訪れて、悲しみが訪れることはあっても嬉しさが込み上げることはまずない。


 俺は思い立ったように、電車で一時間ほどの故郷の地を踏んだ。

 駅を降り立つと、予想通り、その様相は変わり果てていた。一瞬、駅を間違えて降り立ったのかと思ったぐらいだ。

 真夏の日差しが照り付けている中、何のために来たのか、分からなくなった。

 どこかで飯でも食って帰ろう・・

 何故かその時、子供の頃、遊んでいた廃墟を思い出した。

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