そうして祠を覗いてみた結果
「なんだよコレ……」
「こ、これは……」
"ボクらが見たのは"
"缶の山と"
"倒れた二人"
"そして、壊れた祠"
"祠は無惨にも崩れていた"
「見るんじゃない!」
"もう遅いよ"
"懐中電灯を向けたのはボク"
"祠にも二人にもちゃんと向けた"
"だから見ちゃったよ"
"こんな早く、白い肌、紫の唇"
"誰だって分かる。ありえない"
"祠まで歩く山道は昔の、小さいボクでも行けた道"
"そこまで時間はかからない、かからない"
「こんなに早く……?」
"ありえない"
"どうしよう、心臓のドキドキが止まらない"
"でもさっきと違い、今のこれは純粋な恐怖だ"
"ロマンチックさなんて微塵も無い"
"こんなところで?ただ歩いていただけで?それとも何かに襲われた?"
"どうしよう。こんなところで"
「……オマエのせいじゃない」
"こんなときにもキミは優しい"
"だけど、それよりも"
「まだ、わからないよ……脈を、脈を測らないと」
「……それも、そうか」
"なんて言うけれど、分かってる。ウチはお寺だ"
"今は葬儀屋とか色々あるけれど、全く葬儀に関わらない訳じゃない"
"ボク個人が直接それらに関わる訳じゃないけど"
"生きてる人と、そうでない人くらいは分かるんだよ"
"だから、これは、ただの確認作業"
「他には何が必要だ」
「脈と……呼吸。あと119に連絡も入れないと。でも携帯電話って」
「一応、持ってはいるけど、ここは……」
「……だよねぇ」
"ウチも父親が持ってはいるけど、携帯なんて誰もが持ってる訳じゃない"
"携帯の電波だって、我が家の近くは届かんなぁ……とか嘆いてるくらいだ"
"当然、こんな山で使えるようなもんじゃない"
"ポケベルくらいは持ってるけど、これじゃ送信なんてできやしない"
"むしろキミが持ってる事に驚いたくらいだ"
「なら、蘇生は……」
「待って、その前に懐中電灯を目に当てて……」
「黒いとダメなんだっけか?」
「たしか、そう……」
"その場合でも、一応の蘇生はしないといけない"
"学校で人工呼吸と心臓マッサージの講習だけは受けてる"
"やってほしくはないけれど、やりたいわけでもない"
"頭の中がグチャグチャでも、こうも冷静に動けてるのは、やっぱり。亡くなった人々を見送る……そんな家に生まれてきたからだろうか?わからない"
"本当に自分は人間なんだろうか、いや大丈夫だ。きっとそれは間違いない"
"そうでなければ、こんなにも焦ったりはしないはず"
「だから、まずは先に人を呼んで……」
「もう遅いよ」
"え?"
"いつの間に?"
"祠オジイがそこにいた"
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