融合②

 廃ビルが並んで、迷路のように入り組んだ道を右に曲がったり、左に曲がったりして、テケリリの後を追う。


 テケリリの向かう先から、悲鳴が聞こえた。


「きゃああああああ!」


 女性、いや声の若さから少女だろう、通りの一角の廃ビルからする。


 テケリリはそのビルに入った。


 俺も後に続く。


 廃ビルの内部は埃まみれで、机とか、椅子とかガラクタが散乱して床は今にも抜け落ちそうだ。


 窓ガラスは全部抜け落ちていて、そこから直接日の光が差し込み、舞ったホコリに反射されていた。


「いやあ!」


 声は上から聞こえる。


 テケリリが階段を見つけて登り、俺も一気に駆けあがった。


 テケリリの後を追うと、廊下に出る。 


 息が切れて、埃っぽい空気が喉に入って咳き込んだ。


 廊下の先を見ると、横向きに、壁を背にしてセミロングの黒髪の、制服姿の女子高生が尻餅をついていた。


「もう、いやあ!」


 泣きながら叫ぶ。


 彼女のだろうか、テケリリにしがみついている。


 かわいそうに。


 あんな気持ち悪いものに抱きつかなければならないとは、よほど怯えているに違いない。


 その対面に、シェイプシフターがいた。


 粘土がこねくり回されるように、大きくうねっている。


 バトルフィールドは、まだ閉じていない。


 その間に俺のテケリリがいた。


 俺もシェイプシフターと女子高生の間に入る。


「シェイプシフター二、近イ方ガ、先二対戦スル。コレデ、オ前ガ、先ナノハ確実」


 間に合ったか。


 融合しているシェイプシフターは、一つは既に誰か飲み込んだらしく、うねるゼリーの中に一人分の骨が漂っている。


「やだ、あ、あれ、ほ、ほほ、ほね」


 女子高生はガタガタと震えて、言葉にならない声を出している。


「動けるか?」


「ひ、ひと、ほ、ほね、ひ、ひと……」


 ムリそうだ。


 この子は、ここにいて、他のシェイプシフターにやられないのだろうか?


「おい、バトルフィールドにいる間は、他のシェイプシフターは狙わないのか?」


「バトルフィールドノ、中二イレバ、他ノシェイプシフターハ、手ヲ出セナイ」


 俺が負けたら、次は彼女がこいつと戦うことになる。


 けれども、俺がここで負けないなら、逆にここにいた方が安全ということになる。


「そこで、じっとしてるんだ」


「は、はは、はい」


 テケリリを抱きながら、女子高生が答えた。


 ようやく女子高生と意思疎通が取れた。


「こいつはここで倒す!」


 俺は言い切った。

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