ソウルマスター②
その次の第2回は3位で、第3回は、1位を取り返した。
成果が出て、俺は夢中でやり込むようになる。
それから、俺は2年間、常にランキング上位に居続けた。
勝敗ではなく、スキルの強さを競う全体スキルランキングというのがあって、ダメージ部門は俺の独壇場だった。
2年以上に渡って全て1位を取っている。
俺の持ち手のカードなんか、全体の3割もなかったが、それだけの結果が出せた。
敵とはいえ上位のランカーたちと戦略や俺の持ってないカードについて、情報交換したり、深掘りしていくのは楽しかった。
相手の戦略の立て方を学んで、なるほどと感心することもあったし、俺の戦略をばらしても、理解して貰えるのは嬉しい。
ソウルマスターは、俺に取って神ゲーと言ってよかった。
無課金者も低課金者も、トップを目指せなくても十分遊べるゲームだったし、課金者は課金者で、割とすぐにカードは頭打ちになるから課金のブレーキをかけやすい。
ところが、配信2年目で、ゲームの方向性が大きく変わる。
運営会社が大量の資金を導入して満を持して配信した大型ゲームが、大ポチャしたのだ。
運営会社の業績は一気に悪化した。
ソウルマスターは、独特のシステムがネックになっているのか、運営会社ゲームの中で、登録者数はランキングで5位から10位以内、それ以上もそれ以上にもならないゲームだった。
マイナーといえばマイナーだが、堅調といえば堅調。
しかし、大ポチャの影響で、当時の運営は経営が傾いてソウルマスターを別の評判の悪い運営会社に譲渡した。
ゲーム内のそういう事情に詳しい仲間によれば、新運営は買い取ったゲームを劣化させてゾンビ化させることで知られていたそうだ。
それから、実際、ゲームはすごい早さでひどくなった。
まず、新レアリティが解放された。
XR 排出率0.1%
今まで排出して来たカードの10倍以上の威力のスキルを持っていた。
大きくバランスの動くことがほぼないソウルマスターでは、致命的なカードだった。
引ける可能性を得るには1回1万のガチャを5回以上買う必要がある。
あくまで可能性であって、確定するわけではない。
つぎ込んでつぎ込んで、ようやく1枚手に入る。
無課金者どころか、俺のように数万つぎ込む課金者すら手に入らない、重課金者のみが持てるレアリティ。
結局このレアリティは、引退まで俺は通常ガチャで排出したのを一度も見たことがない。
他のプレイヤーからも出たという話もない。
おそらく、通常ガチャでは一切出ない仕様だったのだろう。
それが毎月排出される。
1枚引くのに10万は使う計算で、しかも、それでも、何が出てくるか分からない。
いくらなんでも、ぼり過ぎだ。
ところが、持ってるやつが結構いたのだ。
それも何回も限界突破してる。
そうして、ソウルマスターの課金押しの要素は強くなった。
ただ、この段階では、ゲームの没落はまだ致命的ではなかった。
確かに1つ1つのスキルは超強力だが、あくまで今までの延長だった。
一方的に有効なカードなカードはそうそうあるわけではない。
組み方と戦略がなければ使いこなせない。
優位にたったのは、ある程度はゲームを理解しているプレイヤーだった。
俺もランキングは完全に落ちたわけではなく、1位はもう取れなくなっていたが、10位以内には収まっていた。
詳しい仲間は、元の運営がまだこのときは指南していると言っていた。
しかし、この変化に、今までコツコツ積んでていたプレイヤーは一気に離れた。
同じレベルの戦略のプレイヤー同士なら、低課金者、無課金者は30分リンチされる時間になるわけだからだ。
ゲームは一人の重課金者より、多くの低課金者が下支えしていたからだろう、プレイヤーは激減した。
売り上げはさらに減った。
元の運営の大ポチャより、こっちの方が致命的だったと思う。
新運営はもっとカードをインフレさせた。
そのあと運営がポンポン出してきたカードは、スキルが強いとかの次元じゃない。
例えばある日、対戦していて俺のタブがタップしても何も動かなくなった。
スマホがフリーズしたのかと思った。
対戦画面からは抜けられて、フリーズではなかった。
調べると、そういう相手の新カードのスキルだった。
タブが反応しないのに、どうやって、対戦しろというのか。
それから、苦労して組み上げた俺のデッキのスキルを、無効化し、封じ、奪い、反射させる、新カードはそんなものばかりになる。
組まれた時点で終わり。
何もやりようがない。
能動的にスキルとして使うならマシだ。
しかし、この手のカードはそういうものが、何も考えずとも自動的に発動する仕様になっている。
対抗するには、同じように低排出のカードを買うしかない。
月に1回、ゲームをぶっ壊すカードが出て、それと同時に解除のカードを買わせ、さらにその翌月にはそれを上回るカードが出てくる。
例えば、スキルの無効化なら、翌月には解除するカードが出て、半年後にはその性能が廃課金カードでデフォルトでついている。
もちろん、低課金者以下は置き去りだ。
それどころか、重課金者さえ。
何十万もはたいて手に入れてるカードすら、半年後には、リアルタイムでつぎ込む相手にはまったく使いものにならなくなってしまう。
毎月毎月、常に重課金しなければ勝てない。
かと言っていて、イベント報酬で編成枠が広げられたり、育成要素はあるので、ブランクが開くとそこでも不利になる。
すぐ追い抜かれ、結局課金を続けるしかない。
この段階で、俺はもうランキング100位圏外をうろつくようになった。
逆をいえば、毎月それだけ金を出す廃課金者がぞろぞろいたのだ。
このゲームは、何か、富豪どうしでやりあってるのかと思った。
俺をボコボコにした敵との履歴を見返しても、どいつもこいつも下手くそとしか思えなかった。
かつて、トップでやりあったライバルたちは、負けても、そうきたかとか、よくこんなこと思いつくなとか、感心するところはあった。
言ってみれば、気持ちよく負けたのだ。
だが、あの連中との対戦に、そんなものは何もなかった。
理屈も分からないまま、30分ポチポチしている。
それで、俺はボコボコにされている。
ムカついてしょうがなかった。
だが、所詮負け惜しみなのは分かってる。
運営がそういうゲームにした以上、俺は敗者だ。
昔からの仲間うちでは、このゲームはもう終わりだと話しあうようになる。
それから、どんどんみんな辞めていった。
やればやるほど、逆にストレスが貯まる。
俺も、引退することにした。
今までやり込んできて、引退するのはもったいなかったが、ゲームがこんな状態なら、借金で破産しても俺は勝てないだろう。
そして1年半前、俺はとうとう退会して、もう触らなくなった。
あれ以来、ソシャゲ自体やっていない。
やめて、なんだか解放された気もした。
俺は、何も思い通りにならない、つまらない現実の生活に戻った。
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