ソウルマスター①
俺は、アサキ・ケント。
24歳。
社会の底辺に生きている。
平均年収の半分以下の給料の仕事にしがみつく日々。
学歴もコネも何もないからそんなところでしか働けない。
親ガチャ外れというやつだ。
貧乏でアホな親は、俺に何の投資もせず、足を引っ張るだけだった。
義務教育が終わった時点で、俺は社会に出て自力で生きていなければいけなかった。
こう見えても俺は中学の成績はオール5だったが、成績なんかよくてもバカな親がそれを全部潰すんだから意味がない。
俺がソウルマスターをやり始めたのは5年前だ。
上手くいかない人生のはけ口にしたのがこのゲームだった。
ソウルマスターは、いわゆるソシャゲだ。
通信で1回30分、一対一の対戦を、1日2回遊べる。
そのとき、配信開始されたばかりだった。
スマホに表示された広告に無料で遊べるとか書いてあったから、好奇心でやり始めた。
もちろん無料のキャッチコピーをうのみにしていたわけではない。
こういうゲームはガチャで大量に課金するものなのは知ってる。
最初は軽いつもりでいた。
金の余裕はないから、最初は課金する気はまったくなくて、最強だとか、ランキング上位を目指すわけでなく、気軽にやるだけなら金もかからないと踏んだのだ。
丁度、配信開始直後のタイミングで、きりがよかったのもある。
登録して、実際遊んでみた。
ランダムで相手が決定されて、勝てばイベントごとにカードとか、育成ポイントとか称号とか報酬が貰えるシステム。
このゲームの最大の特徴は、独特の戦闘システムにある。
どう独特なのかは話すと面倒なので、今は割愛させてもらう。
最初は、戦い方がさっぱり分からなかった。
チュートリアルは早く終わらせたくて、適当にタブを押して済ませてしまった。
どのみち、チュートリアルをきちんと終わらせても、あんまり理解出来る内容ではないと思う。
理屈が分からないうちは、勝っても負けても、喜びや悔しさより、何で?という疑問だけがあった。
いいスキルを使っても、全然ダメージが出なかったり、突発的にすごい値が出たりする。
どうやるんだ、これ。
俺はなんでそうなるか気になった。
特に、でかいダメージが出たときは、また出してみたいと思った。
いろいろ試したり、他のプレイヤーのコメントを覗き見たりもした。
そうこうするうちに、だんだんとゲームの仕組みを理解していく。
そして、試行錯誤してデッキを編成して、対戦中の動きを考えることに費やすようになった。
俺は上手かったらしく、それから、安定して勝てちを重ねる。
俺はソウルマスターをやり込むようになった。
勝つ喜びもあったし、ダメージ値をコントロール出来るようになる面白さもあった。
考え抜いた編成が、思いどおりにハマったときは気持ちよかった。
カードのスキルを覚えて、戦略を練って、編成して、実践に臨む。
ゲームは俺の人生なんかより、ずっと手応えがあった。
ゲームの中が、俺自身の能力が反映されるところだった。
学歴がなくて、やりたくもない、向いてもない、儲かりもしない仕事しか選べない俺の現実とは大違いだ。
俺がこのゲームについて、覚えたこと、思いついたことが生かされる。
それに、このゲームは大して時間は取られないから、生活にもたいして支障はなかった。
ゲームの最初こそ育成素材を取るクエストに時間を取られるが、後はルーチンになる。
育成は毎日やってるプレイヤーなら数分で終わるし、育成素材はポンポン余る。
ただ、それだけに持ち手のカードと、戦略の左右する要素が強かった。
俺はゲームのために、月1、2万の課金をした。
どうしても、課金でないと手に入らないスキルがあったからだ。
廃課金か、低課金か、そもそも課金すること自体がバカバカしいかは人によるだろう。
俺は貧乏だから、廃課金と言えるかもしれない。
運営も商売でやっているのだから、布施のつもりもあった。
ガチャ10回 3000コイン=3000円
R 80%
SR 16%
SSR 3%
UR 1%
ガチャは福袋だとか、BOXだとか、スクラッチだとか、種類は様々。
ソウルマスターは、使えるカードと使えないカードがはっきり分かれる。
それはレアリティは関係ない。
SSRでも、滅多に出ないURですら、ダメなカードはダメだし、SRの配布カードでも、いい働きをするのはたくさんある。
せっかく新登場の高レアリティのカードを引いて、意気揚々と編成しても、足を引っ張ることも起こりえた。
というか、俺に負ける重課金者との対戦履歴を見ると、ほとんどがそれだった。
このゲームは意外とカードがインフレしないので、使えるカードはいつまで使える。
ただ、そういうのは、3、4ヶ月に一度くらいしか出てこない。
通常ガチャの選定にも、当分現れない。
それと組み合わせられるものの排出となると、さらにもっと長い目で見ないといけない。
もちろん、課金すれば強くなるのだが、毎月カードが排出されて、選択肢の多さが課金者にとってフェイクになる。
ガチャ運も要るが、予め、どのカードが有効か、自分の編成に合っているのか見極める実力は備えていなければ、いくら重課金しても強くならない。
それだけに、ガチャを引くのは慎重にやる必要がある。
目先の戦力がいくら欲しくても、使えないものをつかまされるリスクは避け、ガチャを引くときは選定カードに出来るだけ使えるカードが揃うのをひたすら待つ。
そういうことも戦略の1つだと当時の俺は思っていた。
そんなこんなで、ゲームが始まって3ヶ月後にあった、第1回全体ランキングで俺は1位を勝ち取った。
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