『高く高く』
「ねぇパパ。たかくたかくして!」
「たかくたかく?」
娘からの不意の言葉に一瞬戸惑う。だが目の前の両腕を上げて期待している顔をする娘を見れば、先ほどの言葉は《高い高い》のことを言っているのだろうと理解する。
娘は保育園に通い始めてから色々な言葉を覚え、今ではすっかりおませな口ぶりをすることもある。それを思えば言い間違いくらい可愛いものだ。そう思いながらも一応の訂正をする。
「いーちゃん、《高く高く》じゃなくて《高い高い》って言うんだよ」
遊ぶ気満々だった娘は動くそぶりもなく小言を言い出した私に不満気になり、今度は語気を強くし幾分か丁寧に教えてくれた。
「ちがう! いーちゃんはたかくたかくしてほしいの!それで、パパがたかいたかいするの!」
「なるほどな」
娘の言葉に一理あるなと納得する。
「じゃあやるからおいで、ほら」
「いちばんたかくまでおねがいします!」
その後は満足のいくまで《高い高い》あらため《高く高く》して遊んだ。
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