『放課後』

「先生さようならー」

「はい、さようなら」


 連絡事項を通達しホームルームを終えた教室はすでに放課後の様相を呈していた。律儀に挨拶をくれた生徒に返事を返し、私は賑やかになった教室を後にする。


 職員室までの道のりは階段を含め300メートルほど、普段より速めに歩けば3分で到着できる。

 残り時間は少なく、ここからは忍耐力が試される。そう、私は今からロッキーになるのだ。

 厳しいトレーニングに耐えるロッキーに自分を重ねながら廊下を進む。頭の中では勿論あの曲が鳴り響いている。


 残り100メートルを切ったところで唐突に試合のゴングが鳴った。急な事態に驚きはしたが私の行動に変わりはない、ただ歩くだけだ。

 まずは挨拶のジャブ、それからジャブ。たまにストレート。執拗なまでのボディへの攻撃が私の気力を削っていく。

 

 しかしてついに「職員室」のプレートを掲げる扉の前までたどり着いた。だが今の目的地は職員室ではない。私はそのまま直進し、職員室の隣にあるピクトグラムが示す空間へと入って行った。


 The final bell 私は勝利を確信して座り込んだ。

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