第9話 昔の恋

 私が大学を卒業してから五年間、恋ができなかったのは、学生時代の彼女のことを引きずっていたためであった。

 彼女は北九州市立大学の同級生で、サークルも同じだった。大学に入学してから、私とその人はすぐに仲良くなった。

 

 大学の卒業旅行として、親には内緒で彼女と二人でグアムに行った時であった。

 海で泳いでいた時、彼女が、

「アイスクリームが食べたくなった」

 と言ったので、私は砂浜に上がった。

 彼女が沖に流されたビーチボールを取りにクロールで泳ぎ始めた時、そこに水上バイクが突っ込んできたのである。


 『死に別れは、生き別れより辛い』と言うが、そのとおりであった。

 その学生時代の彼女を忘れることができたのは、麻美さんと巡り会うことができたからであった。


 私は麻美さんと知り合って3か月ほど経った頃、アパートの鍵のコピーを彼女に渡した。


 麻美さんは、おばあちゃんが全快してからも、時々夕食を作っていた。

 そして麻美さんは、3人分作るのも4人分作るのも一緒だからと言って、私の分の夕食を時々私のアパートに持って来てくれるようになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る